フィギュアスケート男子で66年ぶりの連覇を狙う羽生結弦(23=ANA)が11日、練習拠点のカナダから韓国・仁川国際空港に到着した。昨年11月のNHK杯でケガをして以来、公の場に姿を現すのは94日ぶり。晴れ晴れとした表情で取材に応じ「どの選手より勝ちたい気持ちが強い」と、勝利への強い思いを明かした。現地での調整を経て16日が男子ショートプログラム(SP)。いよいよ羽生の五輪(オリンピック)が始まった。

 午後4時58分。紺のブレザー姿の羽生が仁川国際空港の到着口から現れた。カナダ・トロントから乗ってきた便が到着してから、ちょうど1時間。約200人のファンと報道陣が待ちかまえる中、その間を屈強な8人のボディーガードに囲まれながらさっそうと歩く。体調が悪い時に漂わせる緊張感はない。笑みを浮かべながら、自信をその身にまとっていた。

 右足首を痛めた昨年11月のNHK杯の練習以来、公に姿を現すのは94日ぶり。その間、羽生の回復状況はほとんど伝わってこなかった。肌は白く、顎のラインはやや細くなっているようにみえた。そんな不安を打ち消すように「こうやって試合の場に来られたことがうれしく思いますし、これからこの地でしっかりと調整して、試合をやっていけたら」と無数のフラッシュを浴びながら力強く語った。

 戻ってきた前回王者の視線の先にあるのは、66年ぶりの連覇しかない。

 羽生 そういう気持ちは少なからずありますし、自分にうそをつかないのであれば、2連覇したいという風には思っています。ただ、それだけが目的ではないのでしっかりと試合というものを感じながら、自分の演技を出しながら、この五輪というものをしっかり感じていきたいと思います。

 3カ月ぶりの試合を楽しみつつ、納得のいく演技で勝つことを求めている。勝負の鍵となる4回転ジャンプの構成は現時点で決めていない。「選択肢はたくさんあると思いますし、周りの状況をいろいろ見ながら考えないといけない」と、勝つための戦略をこれから練っていく。

 金メダル候補の宇野や、ネーサン・チェン(米国)らが出場した団体の男子SPをチェックしていたことも明かした。ライバルたちの演技を見て感じたのは「どの選手よりも勝ちたいという気持ちが強くある」「どの選手より、ピークまで持っていける伸びしろがたくさんある」。この日、最も語気が強まった瞬間だった。

 今日12日夜にはサブリンクで初練習を行う予定。平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)の主役が、いよいよ氷の上で舞う。【高場泉穂】