日本のエース宮原知子(19=関大)が自己ベストの75・94点を記録し、4位につけた。冒頭の連続3回転ジャンプで課題の回転不足を克服し、11日の団体SPから6・99点アップ。メダル圏内の3位オズモンド(カナダ)まで2・93点差に迫った。「ロシアからの五輪選手(OAR)」のザギトワが82・92点の世界歴代最高点で首位に立ち、2位は世界女王のメドベージェワ(OAR)。5位の坂本花織(シスメックス)とともに明日23日のフリーで表彰台を目指す。
左手で浜田コーチの手のぬくもりを感じながら、宮原は得点表示を待った。「70点台が出てほしい…」。ぼうぜんと眺めるしかなかった団体SPから丸10日。今度はポカンと口が開いた。想像をはるかに上回る自己ベストに「やっと75点が出せた。最後まで緊張していたので、何とか大きなミスがなく終われてホッとした」と笑顔になった。
全ては出だしに懸かっていた。冒頭のルッツ-トーループの連続3回転ジャンプ。前戦で回転不足を取られ、基礎点が0・7倍と取りこぼした難関だ。直前の6分間練習での感触は二重丸。そのイメージを持ち「『グッ』と跳びました」と氷を蹴った。
生命線となる空中の回転速度は健在。着氷すると「とにかくトーループのことをすぐに考えた」と左足のトー(つま先)をつくタイミングを探り、再び舞い上がった。手応え良く連続ジャンプを終え「トーループは『バッ』って降りました」と場内の拍手を受けた。
団体後の一時帰国を経て、17日の韓国入り後に意識改革を施した。課題の回転不足について、競技未経験の出水トレーナーにイメージを擬音語で伝えてみた。
「グッ(ルッツ踏み切り)→グッ(つなぎ)→グッ(トーループ踏み切り)→バッ! (着氷)」
ルッツ着氷後、トーループへのつなぎを早く感じていた出水トレーナーからは「筋力を使い切れてないと思うよ」と助言された。2人で考えて、答えが出た。
「グッ(ルッツ踏み切り)→グ~~ッ(つなぎ)→グッ(トーループ踏み切り)→バッ! (着氷)」
1度目の着氷時に「グ~~ッ」と我慢し、筋力と氷の反発を生かすイメージを、陸上で何度も確認。0・70点の加点で突破した難関が、表彰台を近づけた。
「もちろんそう(メダルを獲得)できればうれしいですけれど、努力してきたことを全て出したい」
曲がりくねった道が、一直線になった。【松本航】