男子66キロ級の海老沼匡(26)も、ロンドンに続く2大会連続の銅メダルに終わった。

 止まらぬ汗をしたたらせ、海老沼は実直に敗者の弁を口にした。「情けない気持ちでいっぱいです」。

 準決勝の試合中に体に異変が起きた。「いや、なんでもないです」。決して言い訳をしない男は、2度目の夢舞台でもそのさがを変えない。代弁した井上監督によれば、「脇腹から足をつった状態」。昨年世界王者の安バウル(韓国)を相手に優勢に進めた中盤だった。しつこい背負い投げに、普段ならしない審判へのアピールを多用。終盤に指導差で追いつかれると、延長戦では返し技で有効を奪われ、敗れた。「引いてしまった。あの一戦は僕の人生の中においても悔いが残る」。言葉に失望が満ちていた。

 変えようとしたものもあった。旗判定が覆る事件の動揺を引きずり準決勝で敗れたロンドン五輪。その後、精神的な弱さを克服しようと「冒険」を続けた。せんべいを手土産に、1人でフランスに武者修行。東京・渋谷でもジャージー姿で歩いた服装も、14年に結婚した香菜夫人(28)の勧めも受けながら、オシャレに挑戦した。「広く冷静に対処できる自分をもっともっと増やしたい」。その一心で4年間を過ごしてきた。

 約11キロの減量苦から、近年は100%の力を試合で発揮できなかった。この日の異変も関係ないとは言いきれない。「少し休んで考える」今後は、73キロ級へ階級変更する可能性が高い。

 ◆海老沼匡(えびぬま・まさし)1990年(平2)2月15日、栃木県小山市生まれ。5歳から競技を始める。世田谷学園高-明大を経て12年にパーク24入り。同年ロンドン五輪66キロ級銅メダル。世界選手権は11、13、14年と3連覇。得意技は背負い投げ。170センチ。66キロ。