東京オリンピック(五輪)のマラソン代表選考が8日に終了し、男女それぞれ3人の代表が出そろった。

最後の3枠目は昨年12月からの国内指定大会の結果、女子は一山麻緒(ワコール)、男子は大迫傑(ナイキ)に決まった。

これまでは複数のレース結果を比べて代表を選んでいたが、日本陸連は17年に新方式を導入。昨年9月15日のマラソン・グランドチャンピオンシップ(MGC)で2人を決めるなど、選考の方法をガラッと変えた。日本陸連マラソン強化戦略プロジェクトリーダーの瀬古利彦氏(63)がMGCの仕組みを総括した。

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MGCは大成功でした。こんなにうまくいくとは思ってなかった。世界と戦うために目指していたタイムである男子2時間5分30秒、女子2時間21分0秒を最終的に切った。タイムの目標が明確になったことが選手、現場のやる気を引き出したと思う。

最初は設定記録が「高すぎる」「選手がやる気もなくなる」との意見もあった中で、流れを作ったのは大迫。17年福岡国際で2時間7分19秒を出し、他の選手の心に火を付けてくれた。多くの選手が、それに勝てるような練習をするようになった。目標のレベルも上がった。また3年前から五輪につながるレースになって、選手のマラソンへの意識も上がった。MGCが大きな注目を集めて、駅伝よりマラソンを重視してくれるチームも増えた。リーダーとして、うれしかった。

リオ五輪までは選考レースを1回だけ結果を残せば、代表になれた。たまたま好走した選手が代表になってしまったり、何よりスピードを追求する意識が甘かった。その積み重ねでケニア、エチオピア勢との差は広がった。選手は持ちタイムで評価される部分もある。持ちタイムが低いと、なめられる。逆にいいタイムを持っていると、それが選手の格になり、相手を威圧できる武器、自信にもなる。多くの選手の自己ベストが上がったのは大きい。

五輪ではリオの時みたいな惨敗はないと思う。「メダルを取ろう」という目標を明確に持って、本番を迎えて欲しい。

個人的な意見としては、MGCの仕組みは、パリ五輪にもレガシーとして残したい。男子は2時間6分台の自己記録を持つ選手が4人代表から外れる層の厚さになった。もう1回MGCをやれば、女子も2時間20分を切らないと代表になれないレベルに上がると思う。男子も女子もうまくいっている。強化の間でも話しているけど、私1人だけでは決められないからね。でも大成功のMGCを続けられたら、まだまだ日本のマラソンは強くなる。(84年ロサンゼルス、88年ソウル五輪代表)