1万メートルの新谷仁美(32=積水化学)が30分20秒44で7年ぶり2度目の優勝を果たし、東京オリンピック(五輪)代表に内定した。02年渋井陽子(30分48秒89)の日本記録を更新する独走ぶりだった。

今年はハーフマラソン日本新、5000メートル日本歴代2位など好記録を連発。駅伝でも圧倒的な結果を示してきた。昨年は3位だった日本選手権でも、その強さは揺るがなかった。02年に渋井陽子が出してから18年以上も破られていない日本記録30分48秒89の更新を見据え、レースに挑んでいた。強力なアフリカ勢と渡り合い、メダルを目指している。まだまだ12年ロンドン五輪以来、2度目となる五輪の切符など通過点だ。

13年世界選手権1万メートルで5位。しかし、故障にも苦しみ、14年1月に電撃引退した。一時は体重が13キロも増えたというOL生活を経て、18月6月に復帰した。今も走るのは「嫌い」と言い切り、「お金のため。(ペットの)餌代を稼ぐため」とまで言う。ただ、復帰した陸上界は、やはり天職だった。12年ロンドン五輪男子800メートル代表の横田真人コーチと出会い、才能の塊は息を吹き返した。仲間にも支えられ、走る喜びを感じている。

コロナ禍では「アスリートの在り方」を考えた。発信しづらいような意見も積極的にズバズバと述べる。五輪に関しても、持論がある。「東京五輪というのは、国民の皆さんと一緒の気持ちになって初めて成立する。ただ走るだけの姿を見せるのではなく、結果以上のものを我々アスリートが見せなければならない」。まず結果を出し続けているから、もの申す姿にも説得力が宿っている。