東京五輪男子20キロ競歩代表の高橋英輝(28=富士通)が、13キロ付近から一人旅となり、1時間20分19秒で初優勝を飾った。東京五輪のメダル獲得を目標に掲げる中、自己記録からは3分近く遅れ、序盤で川野将虎(東洋大)のペースアップに付いていけなかったこともあって、レース後は反省の弁ばかり並んだ。

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笑顔はなかった。優勝会見の場で、高橋は喜びではなく、反省の言葉を連ねた。第一声は「オリンピックでメダルを取るという目標へ向けて、今の立ち位置と課題の大きさをあらためて感じた」。強い向かい風や20度前後の気温など条件に恵まれなかったとはいえ、タイムも内容も満足できない。唇をグッとかみしめ、現実を見つめた。

そう痛感させられたのは、7キロ付近。川野のペースアップに反応できず、背中が遠のいた。その後、川野の足取りが重くなったおかげで追いつけたが、もしも、五輪で世界の強豪が相手だったなら、置き去りにされて、上位争いから脱落していた形だった。13キロ以降は独歩状態を築いたが、ラスト5キロは失速。「最初の15キロの動きをまとめる力が足りない」と受け止めた。

男子マラソンの日本記録を塗り替えた鈴木健吾は富士通のチームメートだけでなく、18年は一緒にリハビリ期間を過ごし、苦労をともにした仲間だ。「記録が出てうれしかった」。同時に競争心がくすぐられていた。それだけに未熟に思える己の結果が悔しかった。鈴木が出られない東京五輪に自分は出られる。残り約4カ月。浮き彫りになった課題を突き詰め、今度こそ最高の結果を出す。【上田悠太】