東京オリンピック(五輪)代表最後の1枚の切符を懸け、1歩ずつ、懸命に前に進む-。日本陸上選手権50キロ競歩が、石川県輪島市で11日午前7時30分にスタートする。

実力派がそろった中で、実績ナンバーワンと評価されるのが16年リオデジャネイロ五輪銅メダルの荒井広宙(32=富士通)だ。17年ロンドン世界選手権でも銀メダルの実力者。10日の前日会見では「やれることは十分にやってきた。優勝するしか五輪はない」と決意を込めた。豊富な経験を生かし、2大会連続の五輪出場を目指す。

同種目で日本歴代2位の記録を持つ丸尾知司(29=愛知製鋼)も優勝候補の1人。長丁場のレースで勝つためには「レースを冷静に進めていくことが大事。落ち着いて進めたい」。勝負どころをしっかりと見極め、スパートを掛ける。

17年ロンドン世界選手権代表の小林快(28=新潟アルビレックスRC)は「2週間前ぐらいから急激に調子が上がってきた」。仕上がりの良さに自信を示す。

上記の3人は日本陸連が定めた派遣設定記録(3時間45分0秒)をすでに突破しており、優勝すれば即座に代表に内定する。

それ以外の選手も、派遣設定記録をクリアして優勝すれば代表に決まる。19年ドーハ世界選手権代表の野田明宏(25)、18年アジア大会優勝の勝木隼人(30=いずれも自衛隊体育学校)の2人は、その条件を満たせる実力の持ち主。20キロ競歩で2大会五輪出場の藤沢勇(33=ALSOK)は、50キロでも侮れない存在だ。

これらの選手が派遣設定条件を突破できずに優勝した場合は後日、あらかじめ定められた選考条件をもとに、総合的に選出される。とはいえレース当日は天候条件にも恵まれそうで、関係者は「展開的に過度なけん制は考えづらい。出場選手のレベルを考えても、優勝タイムはきっと派遣設定記録を上回るはず」と期待を寄せる。

東京五輪代表切符は3枚用意され、すでに鈴木雄介(富士通)、川野将虎(旭化成)の2人が確保。最後の1枚をめぐって、熱く、ハイレベルなレースが繰り広げられる。