陸上男子100メートルで9秒97の前日本記録保持者、サニブラウン・ハキーム(22=タンブルウィードTC)のもとに、東京オリンピック(五輪)男子400メートルリレー専用の特別仕様スパイクが届いたことが8日、分かった。

契約するプーマ社がサニブラウンのためだけに、作製した新デザイン。甲とかかとには「日の丸」があり、ソール(靴底)には「絆」と記される。16年リオデジャネイロ五輪では銀メダルだったリレー侍は、日本選手権(大阪・24日開幕)の結果次第でメンバーが決まる。

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その新スパイクは「HAKIM KIZUNA SPIKE」(通称)と名付けられている。テーマは「絆」。仲間と1本のバトンをつないでいく男子400メートルリレーで、バトンワークは一瞬のミスが命取り。仲間への信頼、そして絆が大きな命運を分ける。16年リオデジャネイロ五輪では銀メダルだっただけに、金メダルへの期待も高い。思いも強い。注目されるリレーを走る時だけ、サニブラウンは特別な“絆スパイク”を履く予定でいる。

甲と踵の部分には「日の丸」があしらわれる。ソールには、秘める思いを示すように、漢字で「絆」の1文字がプリントされる。コロナ禍で日常は大きく変わった。人との接触も制限されてきた。サニブラウンもスポーツをする意義を考えた。支えてくれた人、ファンへの恩返しの気持ちが強くなった。その思いが凝縮された1足をプーマ社にデザインし、作製してもらった。

サニブラウン 支えてくれる方たちとの絆がデザインされたカスタムスパイクです。サポートしてくれる方たちとの絆を持って、最高の舞台で最高の走りを見せたいと思います。

他に履くことのできる人はいない。自分だけのモデルだ。陸上で、個人の意見は反映されたモデルが作られるのは、超一流に限られる。海外メーカーから、日本人スプリンターが特別モデルを提供されることは、異例中の異例。しかも、出場は有力視されるものの、まだ五輪代表の切符は得ていない。あのボルト氏も履いていたプーマ社から、大きな可能性を認められた形だ。

もともとサニブラウンは、リレーは個人種目の「二の次」という認識が強かった。しかし、東京五輪へ向け、リレーへの思いも少しずつ強くなってきたようだ。その決意は足に宿る。リレーメンバーに名を連ねた19年世界選手権(ドーハ)はアンカーで銅メダルだった。あれから2年。“絆”をまとい、仲間と最高の笑顔で喜び合う。【上田悠太】

◆サニブラウンの近況 5月31日に米フロリダ州で行われた競技会の100メートルに出場し、追い風3・6メートルの参考記録で10秒25だった。これが19年秋の世界選手権(ドーハ)以来、約1年7カ月ぶりの実戦だった。すでに東京五輪の参加標準記録は100メートル、200メートルとも突破済み。次戦は帰国後約2週間の隔離期間を経ての日本選手権となる。