東京都が東京オリンピック・パラリンピック組織委員会との共催などで、大会期間中にパブリックビューイング(PV)会場の設置計画を進めており、その工事が6月1日、渋谷区の都立代々木公園を皮切りに始まる。今月24日からは準備として現場の樹木の剪定(せんてい)作業も実施。コロナ禍、緊急事態宣言下で、都は密を避けること、不要不急の外出の自粛などを求めているが、その一方で人を集める場所をつくる計画を進めることになり、疑問や批判が高まっている。

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都はコロナ禍前に「東京2020ライブサイト」という計画を発表。大会期間中、組織委と共催で、代々木公園と都立井の頭恩賜公園に大規模なPV会場を設置し、公式グッズ販売、飲食などのブースも設け「誰もが楽しみ、大会の感動と興奮を共有できる場所」を目指すとした。被災地として岩手、宮城、福島、熊本でもPVを計画。都としてはほかに都立日比谷公園、都立上野恩賜公園などでも予定している。昨年暮れに池袋、都庁舎など一部を取りやめたが、その際に「都民・国民の共感を得て大会を成功させるためには、都市の活動であるライブサイトの開催は重要。適切な感染症拡大防止対策を行った上で実施」などと方針を掲げた。

今、人を集める場所をつくることは、国民からみればダブルスタンダードでしかない。都のオリ・パラ準備局の担当者に矛盾について聞くと、批判や疑問の声は認識しているとした上で「ライブサイトだけ特別にやろうということは全くない。7月下旬時点での国のイベントの基準や、都からどのようなお願いがされているかに基づいてやっていく」「いろんな意見を聞き検討しているが、大会は開催することになっており、間に合わせるために準備は進めさせていただいている」などと説明した。

来場者数についても、例えば代々木公園では1日3万5000人の来場を予定していたが、事前申し込み制にして絞り込むことも検討しているという。

代々木公園内の会場予定地は、緊急事態宣言に伴い4月から立ち入り禁止措置が続いていた中央広場エリア。24日に始まった準備作業では、工事車両の通行に支障がある樹木36本の枝を生育に配慮し、最小限の剪定をしているという。

こうした動きに対し、経営コンサルタントのロッシェル・カップさんが剪定や会場設置に反対するオンラインの署名活動を始め、26日午前2時半時点で約7万2000筆以上が集まっている。カップさんは署名の広がりについて「たくさんの方が公園の木々を大切にされている。立ち入り禁止にしていた場所が、人を集める場所になっていることに対して怒りを感じている人も多い」と指摘。「環境に影響があるし、コロナ禍でなぜ人を集める場所を作るのか。みんな苦しんでいる状況で不必要なものにお金をかけるのも矛盾。一度つくった計画を、なぜ状況が変化すると見直すことができないのか。必要性について透明性のある形で議論すべき」などと訴える。

都議会、都民ファーストの会の龍円愛梨議員は剪定の件で多くの声が寄せられたことから、25日朝から、代々木公園のPV会場設置について意識調査アンケートを始めた。日頃から子どもと利用しており、個人的には疑問を感じているとした上で「政治家としてはまず、さまざまな意見を聞いて、判断したい」と話している。今のところ、剪定の件でPV計画を知った人が多く、反対の声が多いという。内容をまとめて会派でも共有していきたいという。