米ミネソタ大学感染症研究政策センターのマイケル・オスターホルム所長が26日、米CNNテレビのインタビューで開幕まで2カ月を切った東京オリンピック(五輪)について、現状の計画は最良の科学的根拠に基づいていないと語った。その上で「中止」という良い知らせを多くの人が望んでいると踏み込んだ。

理由として、世界200カ国余りから1万5000人の選手が集まるイベントにおいて、ワクチンの接種が義務付けられていないことを指摘。国によっては大会までにワクチンを受けられない選手がいるほか、およそ半数の国で18歳以下への接種が認められておらず、接種可能な年齢に達していない選手が多くいることを挙げた。

2つ目の理由として、最近になって米疾病対策センター(CDC)が新型コロナウイルスは空気感染する可能性を認めたことを指摘。その上で、選手の競技場への移動や宿泊施設での相部屋、食堂の利用でどう感染を防ぐのかが不透明であり、現状の対策は不十分だと批判した。

また、各国の選手団がそれぞれ自国から(感染予防の規定がない)マスクを持参することや行動追跡アプリについても、感染を防ぐ上での対策が万全ではない理由にあげている。

「選手や関係者を守るための対策を大幅に強化しない限り、危険な大会になる」と語り、「今すぐチャンスを与えたい」と組織委員会やIOCに中止を決断するよう勧告した。

五輪開催を巡っては、ニュージーランド保健省の新型コロナウイルス対策本部顧問を務めるマイケル・ベーカー教授も25日に「開催する根拠も正当性もない」と批判し、人命が奪われる恐れがあると警告を鳴らしたばかり。開催は「ばかげている」と語っており、各国の感染症の専門家からも中止を促す訴えが相次ぐ状況となっている。

一方、国際オリンピック委員会(IOC)の元副会長で最古参委員のディック・パウンド氏(79)はCNNのインタビューで「中止の選択肢は事実上すでに排除されている」と発言し、開催に前向きな姿勢だ。同氏は26日付の英イブニング・スタンダード紙でも「東京五輪を止めることができるのはアルマゲドン(人類滅亡)だけだ」と語り、中止するには「時すでに遅し」だとコメントしている。

日本の医療従事者や実業家、オフィシャルパートナーの朝日新聞までもが中止を求める中、IOCは開催に向けて着々と準備を進めているとCNNテレビは伝えている。(ロサンゼルス=千歳香奈子)