先日、1回目のワクチンを接種した。東京オリンピック(五輪)の国内メディア接種ではなく、かかりつけ医の個別接種だ。自宅がある川崎市は、なかなか対応が早く、思いのほか接種券が早く届いた。すぐにかかりつけ医に電話し予約。接種に至った。

多くの方が話しているように、注射の痛みは、全くといっていいほど感じなかった。接種後、15分ほどアナフィラキシー対応のために医院で待機。看護師さんから、微熱や倦怠(けんたい)感などの副反応の説明を受けた。最後に「熱や倦怠(けんたい)感があったら若いということで。痛しかゆしですけどね」と、笑顔で送り出された。

ひどい副反応は出ていない。接種したのが左腕だったので、翌朝、少し左手がむくんだ。拳を握ろうとすると、むくみで指を内側に折るのが難しかった。接種箇所の痛みも出た。しかし、行動に影響を与えるほどではなく、3~4日ほどで、ともに違和感は消えた。

政府は、モデルナ製のワクチン不足で、職域接種の申請を一時休止するという。その半面、約7万人の東京五輪ボランティアには接種が始まるというニュースも見た。我々、国内メディアも希望の有無を聞かれた。五輪系のワクチン接種も、一種の職域接種ではある。しかし、五輪関係者しか接種できないワクチンを、不足している職域接種に回せばいいのではないかとも思う。

この1カ月、東京五輪組織委員会から来るメールの数が増えた。大半が、感染症対策による変更や、新たな決まり事だ。東京五輪パラリンピックの延期が決定してから、すでに1年以上が経過した。しかし、多くのほころびが露呈する中、対策の付け焼き刃感、その場しのぎは否めない。

少し前までは開催か返上か。それが有観客か無観客かになり、有観客で酒を出すのか出さないのかとなった。なぜ、そのように決まったのか、具体的に科学に基づいた説明はない。プロ野球もサッカーJリーグもやっている。それが理由だったりする。

もう、なし崩しの茶番だ。コロナ禍となった約1年半。全く日本のスポーツ界は無力だった。いや、政府に逆らわず、無力を装ったと言った方がいいのか。「夢と感動と勇気」というお題目を隠れみのに、コロナ禍で、お鉢が回ってこないように息を潜めた。

日本のスポーツ界は、コロナ禍で、同じ国民、社会に生きる人として、具体的に何をしたのだろう。東京都北区には、味の素ナショナルトレセンなど、立派なスポーツ施設がある。そこが、ワクチン接種会場や宿泊施設などで、北区の住民に開放されたという話は聞こえてこない。

7月24日に五輪が開幕し、日本が活躍するたびに「夢、感動、勇気をありがとう」という言葉が連呼され、何もかもが忘れ去られていく。それが、日本のスポーツ界を、どれだけ空疎にしてきたのか。この五輪で、ようやく気づけるチャンスがあったのにと感じている。【吉松忠弘】