【特別編集委員コラム】30日から18回目の交流戦 深謀と混乱の末に誕生/連載9
今年も、プロ野球「日本生命セ・パ交流戦」が開幕します。2005年に始まった交流戦は今年で18回目。2020年はコロナ禍で開催できませんでしたが、すっかり球界の恒例イベントとして定着しました。しかし、かつては交流戦が実現するなど、想像もできませんでした。その頃を取材した私は、毎年、交流戦が実施される幸せをかみしめています。
プロ野球
◆飯島智則(いいじま・とものり)1969年(昭44)生まれ。横浜出身。93年に入社し、プロ野球の横浜(現DeNA)、巨人、大リーグ、NPBなどを担当した。著書「松井秀喜 メジャーにかがやく55番」「イップスは治る!」「イップスの乗り越え方」(企画構成)。日本イップス協会認定トレーナー、日本スポーツマンシップ協会認定コーチ、スポーツ医学検定2級。流通経大の「ジャーナリスト講座」で学生の指導もしている。
メモに残っていた試合数の検討
2006年の手帳を見ると、交流戦の試合数に関するメモが多々あります。
6月にはこう書かれています。
セ・リーグの希望は「5×6=30試合(主催3は隔年)」、パ・リーグの希望は「6×6=36」
交流戦は2005年に各チーム36試合ずつでスタートしましたが、セ・リーグ球団から「多すぎる」という声が上がって、当時は試合数を削減しようと会議が繰り返されていました。
同年7月には、巨人清武代表がまとめ上げた素案が書かれています。
36試合制、24試合制、18試合制の方法、メリットとデメリットが表になっています。
当時はセとパで試合数が違い、パはプレーオフを導入していましたが、セは実施されていませんでした。今思えば、ずいぶんといびつな形で成り立っていたものです。
8月には、会議内における球団代表たちの発言が書いてあります。私は会議に出席していませんから、後で出席者から聞き取った内容です。
「交流戦そのものがセの譲歩で成立しているもの。これ以上の譲歩はない」
「それは違う。交流戦はファンの声に押されて正しい道になっただけ。セの譲歩によって成立したわけではない」
話し合いの末、翌2007年から24試合に落ち着き、両リーグともにクライマックスシリーズ(CS)を導入しました。
さらに15年からの交流戦は18試合になり、現在に至ります。スタート時から試合数は半減しましたが、間延びせず、希少価値も保てて適当だと私は思っています。
2004年の球界再編騒動を機に実現
交流戦は、2004年の球界再編騒動がなければ、とても実現しなかったでしょう。
近鉄とオリックスの球団統合に端を発して1リーグ制へ向かい、2リーグ維持を主張する選手会がストライキをするまでに発展しました。
ファンからも2リーグ制の維持を望む声が多く、この勢いに押される形で、交流戦という「開かずの扉」が開いたわけです。
巨人戦のテレビ放映権に頼る球団経営が主流だった時代、その利権を求めて何度もパ・リーグ球団が提案し、セ側が反対する図式が続きました。
私が記者2年目の1994年にも、パ球団が足並みをそろえて交流戦の実施を提案しますが、セ・リーグはオーナー懇談会を開いて反対の意を示しました。
このとき、セ・リーグ川島廣守会長(のちのコミッショナー)が表明した言葉が、強い姿勢を示しています。
「交流試合の話が出ているが、(セ球団の)全員が強い反対の意志を示した。2リーグでペナントを争うのがプロ野球の基本的な形態。セとパが試合をすることは、その形態を損なうことになる。交流試合には何ら意義を認めないというのが、全員の一致した意見です」
実は、パ・リーグの提案は、1リーグ制への移行を視野に入れたものでした。この年の1月、パのオーナー懇談会で1リーグ制に合意し、当時の吉國一郎コミッショナーに提案した経緯があります。
セ・リーグとしては、交流戦の導入が、1リーグ移行への契機になってしまうという危惧があったのでしょう。
2001年には当時の巨人渡辺恒雄オーナーが、個人的な見解として「ペナントレースと別途でできれば、来年でもおもしろい」と発言しています。この頃の渡辺オーナーの脳裏には、将来的に1リーグ制への移行するというビジョンが描かれていたのでしょう。
つまり、交流戦の導入は、1リーグ制の思惑とともに話題に上がってきたわけです。それが1リーグ制に反対するファンの声で実現したというのは、何とも不思議な思いがします。
交流戦は今年で18回目と、すっかり恒例イベントとして定着しました。リーグが違う球団の対戦は、もはや当たり前の風景となっています。
ただ、私は今なお、交流戦がある幸せをしみじみとかみしめています。長い月日をかけて、混乱から誕生した交流戦。今年もじっくりと楽しみたいものです。
コラム「手帳の余白」
日刊スポーツに「特別編集委員室」が立ち上がりました。取材経験が豊富、かつ表現力が豊かなライター集団。「日刊スポーツ・プレミアム」を中心に、健筆を振るいます。飯島智則編集委員は、コラム「飯島智則 手帳の余白」を随時掲載。どうぞお楽しみ下さい。

1969年(昭44)生まれ。横浜出身。
93年に入社し、プロ野球の横浜(現DeNA)、巨人、大リーグ、NPBなどを担当した。著書「松井秀喜 メジャーにかがやく55番」「イップスは治る!」「イップスの乗り越え方」(企画構成)。
日本イップス協会認定トレーナー、日本スポーツマンシップ協会認定コーチ、スポーツ医学検定2級。流通経大の「ジャーナリスト講座」で学生の指導もしている。
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