江川が策をろうさなかったら?清原、元木、小池…抽選の明暗 日刊ドラフト全史(2)
日刊スポーツは1946年(昭21)3月6日に第1号を発刊してから、これまで約2万8000号もの新聞を発行しています。昭和、平成、そして令和と、それぞれの時代を数多くの記事や写真、そして見出しで報じてきました。日刊スポーツプレミアムでは「日刊スポーツ28000号の旅 ~新聞78年分全部読んでみた~」と題し、日刊スポーツが報じてきた名場面を、ベテラン記者の解説とともにリバイバルします。懐かしい時代、できごとを振り返りながら、あらためてスポーツの素晴らしさやスターの魅力を見つけ出していきましょう。
7回に渡って送るドラフト特集の第2回は、江川卓(法大)がクラウンライターに指名された1977年(昭52)から、小池秀郎(亜大)がロッテ入りを拒否した1990年(平2)を取り上げます。(内容は当時の報道に基づいています。紙面は東京本社最終版)
プロ野球
巨人のボイコットも
江川卓。
野球界の歴史に名を残す豪腕投手は、ドラフト会議を語る上で避けて通れない存在である。
巨人は毎試合テレビ中継されるなど特別な存在であり、セ・パ両リーグの人気に大きな差があった。自由に移籍できるフリーエージェント(FA)制もない。そんな時代背景を念頭に置いて、振り返っていきたい。
◆1977年(昭52)11月23日付紙面
「クラウン→江川〝思案橋〟 2番クジ『巨人・山倉』誕生」
江川卓(法大)にとっては、惜しいドラフトだった。指名順を決めるドラフトで1番を引いたのはクラウンで、本命の巨人は2番だった。クラウンさえ指名を回避してくれれば、巨人に入団することができた。
「ひびき」と題したコラムの全文を紹介したい。朝日新聞でいえば「天声人語」の位置にある記事だ。江川に対して好意的で、その後の強烈なバッシングは想像もつかない内容である。
イの一番にクラウンからドラフト指名された法大江川投手のインタビューを聞いていて「やっぱり若い者は年寄りとは違う」と思った。「これから家族、知人、それから船田先生とも相談して」といいながらも、ハキハキした口調に、前向きの姿勢が感じられた▼指名順がトップクラウン、二番巨人。中村オーナーが岸信介元総理の秘書だった立場と、ドラフト順が決まったあとの昼休み中、巨人正力オーナーがクラウンと接触した場面もあって「あるいは江川を敬遠するのでは」との懸念もあったところだ。だが、クラウンも公言した通りの一位指名。晴れたダイヤモンドにフェアプレーを見るようだった▼決断した以上、クラウンとしては企業の命運をかけ、江川入団の万策を練るだろう。後見人の船田中代議士が十九日の会見で爆弾発言をして「巨人以外だったら、改めて江川君、両親と相談して善処したい」といっていても、プロを目指すならこだわる理由はないはず。連続最下位のクラウンの一番くじは一部ファンをがっかりさせているようだが、天の配剤とみることもできる▼クラウンの救世主、パ・リーグに新しい時代の到来。江川投手にはそれだけの実力もあると思うし、スターバリューもあると思う。若い江川は、またそれを実現できるよう敢然と挑んでいくようでなければ野球人として意味がない▼江川のクラウン入団には、いくぶんの曲折と時間がかかるだろうが、来シーズン、江川があの赤いユニホームでさっそうと登場することを期待したい。
なお、日刊スポーツでは「江川クラウン指名」の号外を作って配布している。その模様も記事に書かれている。
ブルーの号外はあっという間になくなりました。日刊スポーツ新聞社は二十二日、江川のクラウン指名を読者の皆さんに一刻も早くお知らせするために、スポーツ紙では画期的ともいえる号外を都内主要駅付近で無料配布しました。(中略)「すごい関心です。配るというより、まるで奪い取られるって感じでした」
この後の江川に何が起きるか分かっているのだが、、記事を読んでいると「なんとかルール通りに江川の希望がかなってほしい」と願ってしまう。
◆1978年(昭53)11月23日付紙面
「巨人江川と心中 阪神と大トレード 小林・加藤クラス放出も」
記事を引用したい。
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1969年(昭44)生まれ。横浜出身。
93年に入社し、プロ野球の横浜(現DeNA)、巨人、大リーグ、NPBなどを担当した。著書「松井秀喜 メジャーにかがやく55番」「イップスは治る!」「イップスの乗り越え方」(企画構成)。
日本イップス協会認定トレーナー、日本スポーツマンシップ協会認定コーチ、スポーツ医学検定2級。流通経大の「ジャーナリスト講座」で学生の指導もしている。
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