【みゆしょー物語〈上〉】柚木心結と市橋翔哉 差し出した手が握られた日

21年12月のフィギュアスケート全日本選手権。すでに北京五輪代表内定を決めていた三浦璃来、木原龍一組(木下グループ)不在のペア競技には、わずか1組が出場した。愛称「みゆしょー」。結成間もない2人は手を取り合い、26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪へ続く道を進み出した。3回連載の上編。

フィギュア

<26年五輪を目指すフィギュアペア>

世界ジュニア経験の市橋と8歳差ペア

世の関心が東京五輪へと向けられていた、2021年7月のことだった。

周囲の木々に止まったセミの鳴き声を聞きながら長い階段を降りると、左手に大きな建物が見えてきた。

大阪・高槻市の関西大学たかつきアイスアリーナ。

つい3カ月ほど前、北の大地から関西へとやってきた高校1年生は、この日に向けて準備を重ねてきた。

柚木心結(ゆのき・みゆ)、当時15歳。

差し出す手を8歳上の市橋翔哉が、そっと握った。

あの日の出来事を、柚木は少し照れくさそうに思い返した。

「『チャンス!』と思っていました。『7月のトライアウトでダメだったら、そのチャンスもなくなってしまうだろうな…』と考えて、家でできるトレーニングを続けていました」

フィギュアスケートのペア競技。のちの北京五輪で日本勢初7位入賞を飾る三浦璃来、木原龍一組(りくりゅう)に続けと、新たなペア「みゆしょー」が第1歩を踏み出した日だった。

21年全日本選手権 ペアSPの演技中、転倒した市橋翔哉(左)を笑顔で励ます柚木心結

21年全日本選手権 ペアSPの演技中、転倒した市橋翔哉(左)を笑顔で励ます柚木心結

◆柚木心結(ゆのき・みゆ)2006年(平18)1月13日、北海道・帯広市生まれ。3歳でスケートを始める。中学卒業を機に関西に拠点を移し、ペア競技を始める。京都両洋高2年。特技「釣り運がイイ」。趣味「ラクガキ」。身長153センチ。

◆市橋翔哉(いちはし・しょうや)1997年(平9)11月5日、広島市生まれ。小学校入学前に大阪市へ引っ越し、小2の終わりにスケートを始める。高3で本格的にペアへ転向し、関大へ進学。特技は乃木坂46のイントロクイズ。趣味は乃木坂46のライブ巡り。身長175センチ。

清水宏保生んだスケートの町で

広大な大地に清流「十勝川」が潤いをもたらす。柚木は北海道中東部に位置する人口約16万5000人の街、帯広市で生まれた。

3歳の時、近くのカーリング場で初めて氷に立った。

「靴が窮屈で、寒いし、あんまり楽しくないな…」

そうは思っていたが、滑ること自体は好きだった。

同じ「スケート」でもスピードスケートが盛んな街だった。1998年長野五輪男子500メートル金メダルの清水宏保氏らが、この地で育った。それでも小学生になると、柚木はフィギュアの教室でコーチの指導を受け始めた。理由があった。

大学までラグビー部に所属。2013年10月に日刊スポーツ大阪本社へ入社。
プロ野球の阪神を2シーズン担当し、2015年11月から西日本の五輪競技やラグビーを担当。
2018年平昌冬季五輪(フィギュアスケートとショートトラック)、19年ラグビーW杯日本大会、21年東京五輪(マラソンなど札幌開催競技)を取材。
21年11月に東京本社へ異動し、フィギュアスケート、ラグビー、卓球、水泳などを担当。22年北京冬季五輪(フィギュアスケートやショートトラック)、23年ラグビーW杯フランス大会を取材。
身長は185センチ、体重は大学時代に届かなかった〝100キロの壁〟を突破。体形は激変したが、体脂肪率は計らないスタンス。