佐藤駿の努力と人柄 祝福に包まれた決定の時 手術から9カ月、苦闘の日々は報われた

フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ最終第6戦フィンランド大会で、男子の佐藤駿(18=明治大)が初のGPファイナル(12月8日開幕、イタリア・トリノ)進出を決めました。ショートプログラム(SP)3位で迎えたフリーは180・62点を記録。19年にトリノの地で優勝したジュニアGPファイナルの自己ベストを3年がかりで更新し、合計262・21点で2位に入りました。

3位ではファイナルの切符を得られず、全てを出し切ってつかんだ出場権。現地のエスポーで取材した記者が、その舞台裏を見ました。(敬称略)

フィギュア

〈GPシリーズ第6戦フィンランド大会より〉

11月26日、公式練習に臨んだ佐藤駿(右)と日下コーチ

11月26日、公式練習に臨んだ佐藤駿(右)と日下コーチ

【フィンランド大会男子シングル成績上位】


順位名前SPフリー合計
1イリア・マリニン85.57192.82278.39
2佐藤 駿81.59180.62262.21
3ケビン・エイモズ88.96166.73255.69
4壷井達也78.82166.08244.90
5カムデン・プルキネン72.45157.47229.92

2位確保しファイナル切符 日下コーチ「やった~、駿!」

会場となったエスポー・メトロアリーナの取材エリアは、リンクから20メートルほど歩いたところにあった。

集中した目つきでカーテンをくぐり、きらびやかな舞台へと進んでいく選手。一方で緊張感から解放されたスケーターが同じルートを戻り、汗を流しながらひと息つく場所でもあった。

11月26日、GPフィンランド大会の男子フリーは佳境を迎えていた。まずは8番滑走で演技した19歳の壷井達也が、取材エリアに現れた。自らの出来はもちろん、後を滑った佐藤の好演技に冷静な男が興奮気味だった。取材に応える選手と向き合うように設置されたモニターには、米国の17歳マリニンが映し出されていた。壷井は力を込めた。

「今、自分が出来ることは、全て出し切れたフリーかなと思います」

3分ほど話をしていると、後に滑った佐藤が右隣に来た。取材のバトンが移った。演技直後でまだ息が整っていない佐藤が言った。

「まだ決まっていないですけれど『行けたらいいな』ぐらいに思っています」

GPファイナルのことだった。

大学までラグビー部に所属。2013年10月に日刊スポーツ大阪本社へ入社。
プロ野球の阪神を2シーズン担当し、2015年11月から西日本の五輪競技やラグビーを担当。
2018年平昌冬季五輪(フィギュアスケートとショートトラック)、19年ラグビーW杯日本大会、21年東京五輪(マラソンなど札幌開催競技)を取材。
21年11月に東京本社へ異動し、フィギュアスケート、ラグビー、卓球などを担当。22年北京冬季五輪もフィギュアスケートやショートトラックを取材。
大学時代と変わらず身長は185センチ、体重は90キロ台後半を維持。体形は激変したが、体脂肪率は計らないスタンス。