【坂本花織の言葉】過去一番の悔しさと、感動と…「泣いても泣いても、涙が止まらない」

【ボストン=松本航、藤塚大輔】ショートプログラム(SP)5位と出遅れた坂本花織(24=シスメックス)の66年ぶりとなる4連覇はなりませんでした。フリーはほぼノーミス演技で146・95点の合計217・98点をマーク。渾身(こんしん)のガッツポーズを見せましたが、後を滑った米国のアリサ・リュウに3・55点差でかわされ銀メダルとなりました。演技後は、リュウや樋口新葉ら往年の仲間たちの躍動に感涙を流すとともに、悲願を逃した悔し涙も。SP、公式練習後の現地限定インタビューとともに「坂本花織の言葉」としてお届けします。

フィギュア

<世界選手権>◇28日(日本時間29日)◇米ボストン◇女子フリー

女子で2位となった坂本花織(撮影・藤塚大輔)

女子で2位となった坂本花織(撮影・藤塚大輔)

「感情が忙しすぎて追いついてません」

フリーを終えて

―試合を終えて今の心境はいかがですか

演技直後はほんとに自分でもよく頑張ったなっていう感情で、そのあと4人演技見ていろんな人に泣きすぎて、感動しすぎて、なんか感情がよくわかんなくなっちゃって、でもアリサがパーフェクトの演技をして「もうこれは負けたな」って思って、ほんとにアリサの優勝はうれしかったんですけど、そのうれしいっていう気持ちの後に、悔しすぎて、今までで一番悔しかったなっていうのがあって、泣いても泣いても涙が止まらないぐらい、うん、とにかく、こんなにも悔しい試合になったのは久々でした(涙で言葉を詰まらせる)。

―悔しさは力を出し切ってからの2位だからですか

もちろん、ショートのミスが大きく響いてしまったなっていうのもあったし、今日頑張れたっていうのもあるし、まだ正直気持ちが整理しきれてなくて、何を言うかまた考えてたんですけど、ほんとに時間が足らなくて。他の人の演技に見入ってしまったらもう時間がないし、表彰式すぐくるし。とりあえず時の流れに身を任せて過ごしてて、で、今にいたります(笑い)。

女子フリーの演技前に中野園子コーチ(右)から声をかけられる坂本(撮影・藤塚大輔)

女子フリーの演技前に中野園子コーチ(右)から声をかけられる坂本(撮影・藤塚大輔)

―フリーの演技については、自分に勝った、出し切ったという手応えはありますか

ちょっとオイラー―サルコーが怖かったんですけど「こんなところでミスしてる場合じゃない」って思って、軸が歪んでもなんとしてでも立とうって思って頑張って踏ん張ったおかげで、そのあとちゃんと流れが作れたので、そこは入れてよかったっていうのと、3(回転)―3降りたあたりから、なかなか自分の曲もやかましい曲なんですけど(笑い)、それに勝っちゃうぐらいのこのアメリカの声援と拍手に後押しされて、もう最後までこれが鳴り止まないでほしいなっていう気持ちでやって、なんとか最後までできたのでよかったです。

女子フリーで演技を披露する坂本(撮影・藤塚大輔)

女子フリーで演技を披露する坂本(撮影・藤塚大輔)

―長くやってきたメンバーで最終組で滑って、しかもリーダーチェアという新しい仕組みの中で目の前で見てっていうのはどういう感じでしたか

新葉と今日、今日っていうか、もう昨日からかな、絶対頑張ろうっていう話をしてて、今日、メイクしてる最中に突然「頑張ろうね」ってLINE来て、メイクしてるのに泣きそうになって「絶対表彰台、みんで乗ろうね」って言われて、「ちょっとメイクしてんのにやめてくれる!」って言って(笑い)。新葉がそう言える時って、自分でも多分自信があって前向きな気持ちで挑めてる証拠なんだなっていうのが分かったので、不安はなくて、それがあった上で、演技見てたらもう途中から涙止まんなくなっちゃって、ルッツ―アクセル―トーぐらいからどわーって。

―演技前の心境はいかがでしたか

緊張度合いがショートと同じぐらいというかそれ以上で、今日バスに乗ってる時点でやばい、泣きそうってなって、なんか会場入りしてすぐかな、先生に「何そんな不安な顔してんの?」って言われて、ぽろぽろぽろぽろって涙出ちゃって、あかん、緊張がフルマックスやと思って、そのままもういつでも泣ける状態にはなって。でもなんか、いろんな人と話して、穏やかな気持ちを取り戻して、なんとかそのまま本番までいけて、もうそこからはもう涙腺復活で、涙、涙、涙みたいな感じでした。

女子フリーで演技を披露する坂本(撮影・藤塚大輔)

女子フリーで演技を披露する坂本(撮影・藤塚大輔)

―年齢を重ねる内にモチベーションにも苦しむことがあったと思う。坂本選手は何に突き動かされてここまでやってきましたか

やっぱり北京(五輪)で団体でメダルを取れたことと、やっぱ個人で銅メダル取れたことがやっぱり大きくて、そこでもちろんその時もメダルを目指してたんですけど、まさかほんとにメダル取れるとは思ってなかったので、なんか自分でもびっくりな結果だったので、それを経て、やっぱりもう1回この達成感っていうのを味わいたいってすごく思って。やっぱりそれを経験するには、もう1回オリンピックを目指すしかないなってなって。で、もう4年後も頑張りますっていうのを宣言して、この3年間やっぱ頑張ってきたので、来シーズン、ほんとラスト1年、このためにやっぱこの3年間頑張ってきたので、精一杯その成果を発揮する時じゃないかなって思ってます。

―中野コーチが「必要な負けだったんじゃないか」というようなことをおっしゃっていました

やっぱり今までは何連覇とか、優勝候補とかいろいろあって、でも1回0になれば、自分も多分すっきりするだろうし、追いかける立場になれたっていうのは、ほんと自分自身大きいなって思うので、その経験が今回の世界選手権でできたのはすごく自分にとって大きな節目、大きなきっかけだと思います。

女子フリーで演技を披露する坂本(撮影・藤塚大輔)

女子フリーで演技を披露する坂本(撮影・藤塚大輔)

―連覇のプレッシャーから解放されてすこしホッといている部分もありますか

若干。だいぶ荷が重かった。

―リュウ選手とハグはどんな気持ちで

アリサは1回一緒にオリンピックシーズン、北京のシーズンに世界選手権表彰台乗って、そのあと競技から離れてまた復活して、こうやって世界チャンピオンになれたっていうのはほんとにすごいことだし、相当努力したんだろうなっていうのもあって。もちろん彼女のこと尊敬してますし、自分たちにとってもすごい希望の光をこう見せてくれたんじゃないかなって思って。そん時はめちゃくちゃもう感動して、うれしくて、ほんとおめでとうっていう気持ちだったんですけど、おめでとうって言った瞬間に、すっごい悔しくなっちゃって、どの涙かわかんなくなっちゃいました。感情が忙しすぎて追いついてません。

女子フリーで同学年の樋口新葉の演技を見ながら涙を拭う坂本(撮影・藤塚大輔)

女子フリーで同学年の樋口新葉の演技を見ながら涙を拭う坂本(撮影・藤塚大輔)

―リーダーズチェアに座ると全部みるから

あそこは残酷な席。勝てても喜びきれないし、ほんとにあそこって難しいですね。

「次はチャレンジャーの気持ちで挑める」

メダリスト会見

―リュウ選手の変化をどう見ていますか

22年に一緒に表彰台乗ってから、1回競技から彼女が離れて、で、またこうやって復活して、さらにこの世界チャンピオンになるっていう。なんやろう、変わったというか、彼女の変わらないこの明るさと元気さが、世界チャンピオンっていう結果を導いたのかなって思うので、その明るさと元気さと優しさと人の良さがパワーアップしたなっていうのがすごくあります。

試合後、記者会見に臨む(左から)2位の坂本花織、優勝のアリサ・リュウ、3位の千葉百音(共同)

試合後、記者会見に臨む(左から)2位の坂本花織、優勝のアリサ・リュウ、3位の千葉百音(共同)

―ミックスゾーンで日本メディアに対して感情的になっていた理由と、SPから巻き返せた要因を教えてください

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大学までラグビー部に所属。2013年10月に日刊スポーツ大阪本社へ入社。
プロ野球の阪神を2シーズン担当し、2015年11月から西日本の五輪競技やラグビーを担当。
2018年平昌冬季五輪(フィギュアスケートとショートトラック)、19年ラグビーW杯日本大会、21年東京五輪(マラソンなど札幌開催競技)を取材。
21年11月に東京本社へ異動し、フィギュアスケート、ラグビー、卓球、水泳などを担当。22年北京冬季五輪(フィギュアスケートやショートトラック)、23年ラグビーW杯フランス大会を取材。
身長は185センチ、体重は大学時代に届かなかった〝100キロの壁〟を突破。体形は激変したが、体脂肪率は計らないスタンス。