人のために舞ったラスト演技、持ち込んだスコーン 坂本花織が残した“無形の財産”

フィギュアスケート女子の坂本花織(シスメックス)が3月の世界選手権をもって現役を引退しました。最後の試合は日本人単独最多となる4度目の金メダルを獲得。自己ベストの合計238・28点で有終の美を飾りました。

21年間の競技人生を終え、フィギュア界に残した無形の財産に胸を張る姿がありました。26歳の誕生日となる今日4月9日に「Ice Story」としてお届けします。

フィギュア




3月27日、世界選手権 現役引退する坂本は女子フリーの演技を終えると感極まった表情を浮かべる(撮影・PNP)

3月27日、世界選手権 現役引退する坂本は女子フリーの演技を終えると感極まった表情を浮かべる(撮影・PNP)


坂本が誇りに思うこととは


それは触れられるものではない。

でもその無形こそが、坂本の誇りだった。

2026年3月29日。

海外メディア中心の取材で「あなたも日本のレジェンドスケーターに名を連ねる選手だと思う」と伝えられると、いつものように謙遜しながらも、控えめに胸を張った。

「自分がレジェンドの皆さんの名前のところに一緒に連ねられるかどうかは、ちょっと分からないです。でも、スケート界の雰囲気を明るくしたり、みんなが前向きに取り組めるようになったりしたことは、自分はやってこれたかなと思います」

坂本の誇りは、日本人単独最多の4度の世界選手権優勝でも、五輪でつかんだ4個のメダルでもない。

今のフィギュア界に根付いた切磋琢磨(せっさたくま)の雰囲気だった。


3月29日、世界選手権を終えて取材に応じる

3月29日、世界選手権を終えて取材に応じる


忘れられない初取材「心に響くものがありました」


記者がフィギュア担当になって間もないころ。

心に残った場面がある。

本文残り86% (3013文字/3491文字)

岐阜県不破郡垂井町出身。2022年4月入社。同年夏の高校野球取材では西東京を担当。同年10月からスポーツ部(野球以外の担当)所属。
中学時代は軟式野球部で“ショート”を守ったが、高校では演劇部という異色の経歴。大学時代に結成したカーリングチームでは“セカンド”を務めるも、ドローショットに難がある。