井村雅代の目にも涙「ああ、この子も私と一緒…」 代表を離れ2人、新時代に挑む/下

アーティスティックスイミング(AC)の井村雅代コーチ(C、72)は、21年の東京で、指導者として初めて五輪をメダルなしで終えた。もやもやを抱えていた閉会式の日、乾友紀子(32=井村ク)の言葉に胸をつかれた。

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井村雅代〈上〉からつづく

22年日本選手権、競技前に井村コーチ(左)からのアドバイスを受ける乾

22年日本選手権、競技前に井村コーチ(左)からのアドバイスを受ける乾

「不完全燃焼なんだと。勝負をやりきった感じがない」

祭典の終わりが近づき、選手たちの解放感が漂う選手村。

井村Cは、食堂に向かう途中で乾の言葉を聞いた。

「先生、私、来シーズン、ソロをやりたい」

「何で?」

「良くても、悪くても、自分のことを世界で評価されたい」

その時のことを振り返ると、井村Cの目に涙が浮かんだ。

井村C まいった、まいった。ああ、この子も私と一緒で不完全燃焼なんだと。あの子は勝負をやりきった、試合をした感じがない。それは私も一緒。だから乾がやりたい、といった時に、この子にすごく悪いことをしたなあと思った。

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スポーツ

益田一弘Kazuhiro Masuda

Hiroshima

広島市生まれ。2000年の入社からバトル、相撲、サッカー、野球を担当して、13年からオリンピック担当。
14年ソチ、16年リオデジャネイロを取材して、18年平昌、21年東京は五輪班キャップを務める。東京五輪後に一般スポーツデスク。
大学時代はボクシング部で全日本選手権出場も初戦敗退。アマチュア戦績は21勝(17KO)8敗。