辰吉寿以輝の現在地〈3〉クリードよりロッキー…那須川天心戦で名を上げた男と激突

平成のカリスマ、丈一郎を父に持つ辰吉寿以輝(27=大阪帝拳)。

日本初の親子世界王者につながる道を一途に歩む。

2年9カ月ぶりの復帰戦を5回TKOで飾った8月かから3カ月後に次戦が決定した。

11月15日、両国国技館。

日本バンタム級11位与那覇勇気(32=真正)と対戦する。

ボクシング

大阪帝拳ジムから車で約1時間、辰吉寿以輝が出稽古で訪れた勝輝ジム

大阪帝拳ジムから車で約1時間、辰吉寿以輝が出稽古で訪れた勝輝ジム

11・15日本11位与那覇勇気と復帰第2戦

夕闇が迫る中、寿以輝はハンドルを握って、愛車を大阪南部の堺市に向けて走らせていた。

9月29日、午後6時過ぎ。

与那覇戦の発表会見からわずか2日後だった。

助手席では15年からコンビを組むフィリピン出身のトレーナー、アトン・レチェエル(35)がスマホを眺めていた。

平日の夕方、阪神高速は渋滞ぎみ。

カーステレオからは映画ロッキーのテーマ曲「アイ・オブ・ザ・タイガー」が流れていた。

「クリードよりも、ロッキーが好きなんですよ」

寿以輝がぽつりと言った。

伝説的なボクシング映画「ロッキー」は、15年に生まれ変わった。

ロッキーの宿敵であり、親友だったアポロの息子アドニス・クリードを主人公として、再びスクリーンに帰ってきた。

第3作まで公開され、スタイリッシュなボクシングシーン、細部まで鮮明に映し出されたスローモーションなどでヒットした。

だが寿以輝はやや誇張された、レトロな殴り合いのロッキーが好みだという。

1階級上の日本ランカーとのスパーリングに向けて入念に準備する寿以輝

1階級上の日本ランカーとのスパーリングに向けて入念に準備する寿以輝

1階級上ランカーとのスパーで見えたもの

車は、大阪帝拳ジムから約1時間かけて、目的地に到着した。

11・15に向けた最初の出稽古先である堺市内の勝輝ジム。

スパーリングの相手は、日本フェザー級5位殿村恭平(28)だった。

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スポーツ

益田一弘Kazuhiro Masuda

Hiroshima

広島市生まれ。2000年の入社からバトル、相撲、サッカー、野球を担当して、13年からオリンピック担当。
14年ソチ、16年リオデジャネイロを取材して、18年平昌、21年東京は五輪班キャップを務める。東京五輪後に一般スポーツデスク。
大学時代はボクシング部で全日本選手権出場も初戦敗退。アマチュア戦績は21勝(17KO)8敗。