【大上悟・オレに任せろ】

 ついにここまでたどり着いた。武田豊樹が今年初のG1決勝の大舞台だ。1月の和歌山G3の初日特選で落車棄権という幕開けから220日目。ついに今年初のG1制覇へ照準が合った。

 「矢野(昌彦)の気持ちひとつだった。また一緒に走りたい」と、準決11Rで青板バックから先行した後輩をねぎらった。打鐘から巻き返した中部勢の動きに合わせて最終ホームから番手発進。おとこ気先行に応えたシリーズ初勝利だった。

 五輪イヤーは苦闘の連続だった。特に6月の高松宮記念杯準決での落車は選手生命を左右しかねないアクシデントだった。頭部を強打して一時は意識不明。数日間は左目が視力低下して、視野角が狭まった。それでも落車直後にバンク練習を再開。「左目がよく見えないよ」と、苦笑しながらバンクを駆け続けるタフなハートは、練習に参加した後輩たちをおののかせた。

 準決は最終ホームから1周を駆け抜けて、ここまで無冠だった負の連鎖を断ち切った。連覇を狙う新田祐大のスピードは強烈だが、目標には完全再生した平原康多がいる。

 平原は「左ペダルのサン(シューズ固定用具)の角度を元に戻して車の出が完全に戻った」と、準決9Rで番手まくりの稲垣裕之を猛追して2着。決勝で逃げるのは稲垣の前で総力戦にでる村上義弘だが、平原なら中団をキープ。新田を後方に置いて先まくりを放つ。直線一気に抜け出す武田がスーパーダッシュでまくる新田とゴール前勝負だ。3連単は(7)=(9)から総流し。