優勝した村上義弘。左右はU字工事(撮影・栗田文人)
優勝した村上義弘。左右はU字工事(撮影・栗田文人)

競輪、楽しんでいますか?

宇都宮競輪70周年記念(G3)は村上義弘が優勝した。表彰式でのうれしそうな表情が印象的で、特に子供たちの声援には何度も手を挙げて応えていた。その後、検車場で「最近は練習をすればするほど調子が悪くなって、もう体力的には天井かなと思ったこともある。それでも上を目指す気持ちはずっと持っていた。常に危機感を持ってやってきた。熱が出ても腰が痛くても1つ1つの練習をやってきたことが、自分の底力になっているのかもしれない」と語る姿は神々しかった。

心の師と仰ぐ松本整氏(引退)が決勝翌日の20日に還暦を迎え、翌21日には京都市内で還暦を祝う会が予定されていた。村上は「今でも怒られてばかり。最近の成績が良くなかったので、どうしようかと思っていたが、これで少しはいい報告ができる」とホッとした表情。きっと、会は盛り上がったことだろう。ちなみに当方も調子に乗って松本氏に還暦祝いのメールを送ったところ「ありがとうございます。ただ、まだまだ30歳ぐらいのつもりなので、実感がありません」との返信だった。年下の当方よりも圧倒的に若い。

初日1Rを1番車で逃げ切った河合佑弥(撮影・栗田文人)
初日1Rを1番車で逃げ切った河合佑弥(撮影・栗田文人)
パワフル先行でファンを沸かせた野口裕史(撮影・栗田文人)
パワフル先行でファンを沸かせた野口裕史(撮影・栗田文人)
2予で突っ張られた同期野口裕史へのリベンジを誓う南潤(撮影・栗田文人)
2予で突っ張られた同期野口裕史へのリベンジを誓う南潤(撮影・栗田文人)

さて、今シリーズは若手が目立った4日間でもあった。中でも「調布のユル・ブリナー」河合佑弥、「千葉の重戦車」野口裕史、そして「輪界のM・J」南潤の先行が連日、風のワンダーランドを沸かせた。それぞれ力を出し切れたレースがあった一方で、全く出せなかったレースもあったが、何もかもうまくいくわけはない。今回味わった成功体験と挫折は必ず次の飛躍につながるはずだ。

準決2着後、レースを振り返る渡辺雄太(撮影・栗田文人)
準決2着後、レースを振り返る渡辺雄太(撮影・栗田文人)

そして何といっても勢いの違いを見せつけたのが渡辺雄太だ。準決で打鐘から先行し、平原康多の強烈無比のまくりを合わせ切ったのには驚かされた。決して平原も調子は悪くなかったが、渡辺の強地足はその上をいっていた。高松宮記念杯で初タイトル奪取! のシーンがはっきり見えてきた。

もちろん、決勝に乗った神山拓弥、長島大介や輪聖・神山雄一郎、ベテラン中村淳など地元勢の奮闘も光った。平原、浅井康太、菅田壱道、稲垣裕之らも随所に存在感を示し、いいシリーズだったと思う。【栗田文人】