競輪、楽しんでいますか?

27日に終了した前橋F1は、黒沢征治の完全Vで幕を閉じた。ナショナルチームの新山響平を破ってのものだけに価値がある。準決を快勝後「新山君とはもちろん初めて。あれだけ強い人との対戦を開催前から楽しみにしていた」と話していたが、いきなり勝ってしまったことには本人もビックリなのでは。昨秋に父を亡くすなど苦しい時期もあったと思う。本当におめでとう。来月のG1全日本選抜(川崎)が楽しみになった。

ちなみに、黒沢は野球出身で、大学時代には152キロを出す剛速球投手だったことはよく知られている。一時期はプロのスカウトにも注目される存在だったが、社会人で伸びず、夢を諦めた苦い思い出がある。

S級で完全優勝を飾った黒沢征治
S級で完全優勝を飾った黒沢征治

新山同様に決勝で初対戦した松谷秀幸はプロ野球ヤクルトの元投手。野球のプロとアマとの間には、我々外野の想像を超えた壁があるのだろう。黒沢は「もちろん(松谷を)よく知っています。ただ、お話ししたことはない。恐れ多くて…」と話していた。今回の優勝で、松谷の頭の中にも黒沢の存在がインプットされたことは間違いない。

その松谷だが、現在、ホームバンクで行われる全日本選抜に向けて仕上げている真っ最中。「実は地元から7人しか出られないんですよ。だから余計に頑張りたいと思っています」と気合が入っていた。決勝で松井宏佑-郡司浩平-松谷なんてラインができたら、さぞやしびれることだろう。

地元G1に向け、調子を上げてきた松谷秀幸
地元G1に向け、調子を上げてきた松谷秀幸

ここからは、お食事中の皆様には申し訳ありません。

今開催を盛り上げた選手に坂井洋と小笠原光がいる。2人は、出身、年齢、期別も異なるのだが、アマ時代からの知り合いとのことで、なぜか気が合う様子。今開催も検車場で暇があれば、じゃれ合って? いた。

坂井はS級初日特選で新山を突っ張って2周半先行し、番手神山拓弥の勝利に貢献。一方、小笠原はA級準決で城幸弘、渡辺直弥といった格上相手に赤板先行して2着に入った。そして、そろってレース後

「ゲロを吐きました」。 ついつい「どこまで仲がええねん」と突っ込みたくなった。

ただ、それだけリミットを超えて力を出し切れたわけで、還暦間近のジジイには、その若さがまぶしくて仕方がなかった。

期別、年齢、出身も異なる坂井洋(左)と小笠原光だが、妙に気が合うようだ
期別、年齢、出身も異なる坂井洋(左)と小笠原光だが、妙に気が合うようだ

特に小笠原は「おじいちゃんが群馬の人で“選手になったら見に来てね”と話していたけど、昨年亡くなってしまってかなわなかった。だから今回は余計に頑張れた」と、泣かせる話も披露するなど、発信力にも秀でている。坂井ともども、近未来の東日本の輪界を公私にわたって引っ張っていくに違いない。

準決を逃げて2着に粘り、苦悶の表情を浮かべる小笠原光
準決を逃げて2着に粘り、苦悶の表情を浮かべる小笠原光

最後に、今開催の前検日、当方も初めて新型コロナウイルスの抗原検査なるものを受けた。幸い、選手、JKA関係者、報道陣は全て陰性。検車場にいつになくホッとした、朗らかなムードが漂ったことは忘れられない。

ただ、あくまでも個人的な考えを言わせてもらえば、よほど夜遊びをしているとか、マスク、手洗いをしないとか、ではないのであれば、万一感染してしまった人を責めることはしたくない。当方も含めて、ウイルスはどこからどうやって侵入してくるのか、本当に分からないと思うからだ。【栗田文人】

最後に、ガールズ決勝進出した右から小林莉子(優勝)、岡本二菜(6着)、石井貴子(2着)の東京トリオ
最後に、ガールズ決勝進出した右から小林莉子(優勝)、岡本二菜(6着)、石井貴子(2着)の東京トリオ