長崎・大村ボートで開催中のSG(スペシャルグレードレース)のボートレースクラシックは、21日の最終日、12Rで優勝戦が行われる。1枠には、遠藤エミ(34=滋賀)が入った。女子レーサー史上3人目となるSG優出を果たし、1枠で臨むのは01年の寺田千恵(からつグラチャン、5着)以来。史上初めて、女子レーサーとしてのSG制覇へ臨む遠藤は、どんなレーサー人生を歩んだか。

   ◇   ◇   ◇

遠藤エミがボートレーサーを志したきっかけは2歳上の姉、ゆみ(107期・引退)が試験を受ける時に一緒に誘われたこと。2度目の試験で合格してやまと学校(現・ボートレーサー養成所)の門をくぐった。在校時のリーグ戦勝率は3・92だった。08年5月に地元のびわこでデビューした。デビュー期の勝率は2・40ながらも3勝マーク。この頃から、非凡な旋回スピードに注目を集める者は少なくなかった。

デビュー3期目にB1級に昇格すると、そこから着実に成績は上昇カーブを描き、デビュー9期目に初A2級、翌10期目には最上位のA1級に昇格した。

彼女が大きく飛躍を果たすきっかけになったのが15年8月、蒲郡で開催されたボートレースメモリアルでびわこボートの施行者推薦としてSG初出場を決めたことだった。初日5Rで4コースから2着に入ると、2日目3Rでイン逃げを決めてSG初勝利。準優進出こそ逃したとはいえ、男子の一線級を相手に互角に戦える実力を大いにアピール。「SG優勝を狙える女子レーサー」として周囲に認知されることになった。

初めて女子のビッグタイトルを手にしたのは、17年12月の大村プレミアムG1クイーンズクライマックスだった。4戦全勝の完全Vと圧倒的な強さを見せつけるとともに、初の女子獲得賞金トップと、名実ともに女子のトップランカーに躍り出た。

その後はビッグタイトルに届きそうで届かない時期が続いたが、昨年8月、浜名湖でのプレミアムG1レディースチャンピオンで2度目のG1優勝。6439万8000円を稼ぎ出して2度目の女子獲得賞金トップおよび、優秀女子選手の栄誉を獲得した。そして今回、女子レーサーとしては前人未到のSG初優勝を狙えるチャンスが来た。

趣味はキャンプ。数人で山とか自然の中ですることが多いとか。家では全く料理をしないが、キャンプに行くと簡単に作れそうなものを探して作るそうだ。ちなみに得意料理はギョーザで皮から作る本格的なもの。これに関しては仲のいい今井美亜(106期・福井)が「ギョーザ界で最もおいしい」と大絶賛するほど。豚骨ラーメンをスープも麺も自分の手で作りたいという夢も描いている。また、最近はパワーヨガにはまっている。以前からイメージトレーニングや体幹を鍛えるトレーニングに取り組んでいたが5、6年前にニューヨークへ遊びに行った時、そこで出会ったおじいさんがパワーヨガをやっていたことを思い出して、再び始めるようになった。

彼女の魅力はレースに取り組む真摯(しんし)な姿勢。負けても愚痴をこぼしたり、弱音を吐くことはない。また、勝ったら勝ったで浮かれることなく、貪欲に白星を追い求める。おそらく、今回優勝したからといって、満足することはないだろう。2つ目の戴冠、さらにはグランプリ優勝を思い描いているに違いない。遠藤が黄金のヘルメット(SGグランプリを制した際、表彰式で栄誉として)をかぶる姿も決して夢物語ではない。そう遠くないうちに実現するものと信じてる。