目に見えない新型コロナウイルスという敵と戦い続け、3年近くが経過しようとしています。フットボールだけでなく、多くの競技で限界が近くなっていることは想像できます。経済的な視点から見てみると、スポーツ興行における3本の柱と呼ばれる「放映権収入」「チケット・物販収入」「スポンサー収入」のうち1本が大きく折れた状況。計算できる柱ではなくなってしまいました。4大リーグにおけるビッグクラブにおいても顕著にそのマイナスインパクトは見られますが、放映権収入が取れていない中小国のクラブは大打撃であることに間違いありません。

そんな中、なんとか「お金を集める」新しい方法として形になりつつあるブロックチェーン技術を活用したトークン販売等によるマネタイズ手法が定着しつつあります。いわゆる、デジタル通貨の販売・売買手数料によるマネタイズということではありますが、世界を見るとその動きは加速しています。法規制が不十分にな部分もありますが、とにかく「お金を集める」事と、ファンの方々の満足度という部分、そしてクラブとファンのコミュニケーションといった3つの部分が重ねあうこの新しい方法は、まさに求められていた商品であることに間違いはないと思います。

この商品の特徴は、トークンそのものの価値に変動性がある部分。つまり購入時の価格よりも上がる可能性もあれば下がる可能性もあるので、チームの方向性に将来性があると見込まれたり、チームの活動に賛同が得られたりするほど購入者数も増加する可能性があります。増加の場合は株価同様1トークンあたりの価格が自動的に上がっていきます。この売買における手数料数%がクラブの収入になるということですが、近年この手数料収入の一部を選手の給与に当てるというケースも出ており、新しい展開を迎えています。例えると、社員が入社時に自社株を購入し、その株価の売買手数料の一部が給与になるということでしょうか。この例えからすると自社株の売却益が手に入るというものではないので、株取引の世界とは少し様子が違うのかもしれません。この売買手数料が給与になるということからいくと、選手の活躍度合いによってその売買が行われれば行われるほど手数料が発生しますので、やはりファンとの距離をいかに縮め、いかにファングループとコミュニケーションを取るのか、そういった積み重ねが結局のところ跳ね返ってくるように感じます。

ヨーロッパではそのファンとの距離という部分で一部問題視されるようなトラブルもおきたりしているようで、距離が近すぎてもそれはそれで問題あるという部分も持ち合わせているようです。

気になるのはこのブロックチェーン技術を活用したプロダクトをまだ導入していないビッグクラブがあるという部分。恐らくではありますが、なんとなくの世界感が把握できて来たこともあり、窮地に陥りつつも、まだ最後の一手は残しておくという戦略のようにも見えます。ビッグクラブがこのブロックチェーン技術の活用プロダクトの採用に手を出す時がくるのか、その前にコロナが落ち着くのか、それとも中東・ロシアのオイルマネーに身を振るのか、クラブがどの方向性に舵を切るのか注視していきたいと思います。【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)