“大人”のFW岡崎慎司(28=マインツ)が、壮大なゴールを演出した。後半9分に代名詞の「ダイビングヘッド」で2試合連続弾。さらに同35分にMF柴崎岳(22=鹿島)が放った42メートルのロングシュートをお膳立てし、花を持たせた。W杯南アフリカ大会出場を決めたアジア最終予選ウズベキスタン戦(09年6月6日)を再現するゴールとともに、日本の大黒柱にふさわしい器量を見せた。

 岡崎の代名詞が、飛び出した。1点リードの後半9分、DF太田の左クロスをファーサイドで待ち受ける。柔らかい浮き球に、ダイビングヘッド。「ふかさない(上に外さない)ようにしないといけないから、やっぱりヘッドかなと思って」。新体制の初陣となったチュニジア戦に続く得点。18年W杯ロシア大会出場権を争うことになるウズベキスタンに見せた豪快なヘッド弾は、今も日本人の記憶に刻まれている。

 09年6月6日、W杯南ア大会出場に日本は王手をかけ迎えた敵地でのウズベキスタン戦で決めた決勝点の再現。「自信を持てるようになったゴール」。岡田ジャパンを4度目のW杯へ導き「岡崎」の名を日本中にとどろかせた。日本のストライカーとして、ゴールを取り続け通算42点目。今や大黒柱にふさわしい器量を見せるほど大きくなった。

 後半35分に柴崎が相手ゴールまで42メートルの位置から放ったロングシュート。無人のゴールに吸い込まれようとしているボールに、相手DFより先に岡崎が追いついた。少し触るだけで自身の2点目-。しかし相手に体を入れてブロック。記録は柴崎のゴールとアナウンスされた。

 「いいシュートだったし、歓声も聞こえてきたので『触ったらよくないな』と。(打つか)迷ったというのが正直なところだけど。ドイツだったら自分で決めてましたね。ゴールを決めるか決めないかは、選手のバロメーターになる。ゴールは選手にとってすごく大きい。それを俺は知っているから」。点取り屋の本能と葛藤しながら、後輩に花を持たせる器量が、瞬間を争うピッチの上で出た。

 就任2戦目のハリルホジッチ監督から「岡崎はボールに付いていったけど、得点を取らなかった。あれはスペクタクル(壮大)」とたたえられ、素晴らしいと連呼された。6月にはW杯ロシア大会をかけた新たな戦いが待っている。「アジア杯でがっかりさせてしまった。もう1度足りないところを見据えて強化しているところ。大事なものを担っている。今回が改革の1回目。監督のやろうとする気持ちをすごく感じるし、監督を信じようと思う」と岡崎。ゴール以上に示した大きな器量が、日本をきっと強くする。【栗田成芳】