約1年5カ月ぶりに日本代表に復帰したFW大迫勇也(26=ケルン)が、2ゴールを挙げた。古巣鹿島の本拠地カシマサッカースタジアムで躍動し、1トップとしてハリルホジッチ監督にドイツで成長した実力を認めさせた。15日に行われるW杯アジア最終予選サウジアラビア戦(埼玉)での先発候補に名乗りを上げた。

 心も体も強くなって、帰ってきた。大迫を象徴する2発だった。サウジアラビア戦を見据え、1トップで先発。前半32分、清武の左斜め45度からのクロスに合わせ、ゴール前に走り込んだ。パスコースにいた味方の本田を上半身で吹き飛ばすほどの強さと貪欲さ。「監督からは引いてくるなと言われたし、ゴール前でパワーを使うことだけ考えていました。内容どうこうより得点を取ることしか考えていなかった」。体勢を崩すことなく頭で合わせ、ゴールネットを揺らした。13年11月の欧州遠征オランダ戦以来、約3年ぶりとなる代表弾だった。

 2点目はもともと備えていた技術と、ドイツの屈強なDF陣にもまれて培った下半身の強さが生み出した。同42分、清武-本田-清武と細かいパス回しで作った好機。清武の縦パスを右足でトラップすると、左足で切り返してDFを一瞬で振り切った。「ゴール前で余裕が大事だとあらためて分かった」。GKの動きまで冷静に見て、右足を振り抜き、ゴール左隅に決めた。1トップを争う岡崎も「あの切り返しができていることはスゲエ。自分ももっと勝負できたらいい」と絶賛。清武には「日本で一番ボールが収まるやつ」と認められた。

 13年まで慣れ親しんだカシマスタジアムの雰囲気も背中を押した。「においとか、懐かしい感じ。自然とモチベーションが上がりました」とニンマリ。3万3709人が一番大きく贈った「オオサコ」コールにも応える凱旋(がいせん)弾にもなった。

 ハリルホジッチ監督からも「このポジションに本当に良い候補が見つかった」と高評価を得た。12年ロンドン五輪代表に直前で落選し、14年W杯ブラジル大会では先発起用に応えられなかった悔しさが今でも残る。「サウジアラビア戦で勝ち点3を取るしかないので、全身全霊をかけて戦いたい。自分が先発することしか考えていない」。もう1トップを譲るつもりはない。【鎌田直秀】

 ◆「大迫半端ない」 08年度の全国高校サッカー選手権準々決勝で鹿児島城西は滝川二と対戦。鹿児島城西は大迫の2発を含む6得点で圧勝し、敗れた滝川二の主将が控室で「大迫、半端ないって」と号泣。その姿が全国中継されて知れ渡り、大迫のすごさを形容する言葉になった。