日本が今日31日、6大会連続のW杯出場を懸けオーストラリアと対戦する。

 勝つのは至難の業!? 6月にロシアで開かれたコンフェデレーションズ杯を現地視察した日刊スポーツ評論家の宮沢ミシェル氏(54)が、オーストラリアの3試合を徹底分析。日本は、FWトミ・ユリッチ(26)をおとりにして2列目が突っ込んでくる「ダミー作戦」を警戒すべきと指摘。組織力強化に努める相手を崩す必勝戦略として「斜め」をキーワードに挙げた。

 オーストラリアが難攻不落に見えた。コンフェデ杯3戦目のチリ戦直後に受けた正直な感想は「日本は勝てない」だった。フィジカルが強い上に、最近は組織力も高めている。前線から最終ラインまでがコンパクトで、どのポジションも選手の距離感がいい。

 警戒が必要なのはセンターFWのユリッチだが、実はもっと危険なのが、その周辺の選手たちだ。ユリッチが負傷を抱えているとの情報もあり、空中戦に強いクルーズの起用も考えられる。いずれにしても、最前線にはヘディングの強い選手を入れてくる。

 相手のセンターFWは、吉田らDF陣が2人で挟めば、十分マークできる。しかしそこに、気を取られすぎると、2列目の選手にやられてしまう危険性がある。いわゆる「1トップのダミー作戦」で、日本のDFの間を狙うユリッチがニアへ、ファーへ複雑に動き、2人がかりでマークする隙に、2列目のロギッチとクルーズが、逆サイドからスッと入ってくる。終盤には途中交代でケーヒルも加わる。山口や長谷部らボランチがそのケアを一瞬でも逃すと、大変なことになる。

 過去のオーストラリアは世界屈指の身体能力に頼るサッカーをしてきた。そこに限界を感じ、最近はポゼッションを心掛けている。コンフェデ杯から本格的に試したこの戦術は、実戦を重ね、どんどんはまってきた。初戦のドイツ戦、2戦目のカメルーン戦では、ボランチの両脇、3バックの間に隙があったが、チリ戦では見事に修正してきた。

 日本が勝つとしたら「斜めの動き」をどのポジションからも多用することだ。基本的に縦パスは通らないと思った方がいい。相手は、中盤も最前線のくさびも、縦に入れるパスをつぶす能力は高い。中盤の簡単なパス1つでも、1度は斜め横に出してからの方がいい。当然、最前線へのくさびパスも、両翼に展開してから入れることだ。

 パスだけではない。選手の動きも斜めがポイントになる。3トップの両翼は、1度サイドに開いてから、ボランチとDFの間を斜めに走ることでパスが通る確率が高まる。オーストラリアの選手たちは、目の前の選手をつぶす力は強いが、横にずらされると、パワーが分散される。日本のスピードと瞬発力を最大限に生かすため、斜めの動きを何度も試みることは大事だ。

 もう1つ。オーストラリアは身体能力の高さを過信する傾向がわずかだが、ある。相手のクロスに対し、DF陣がヘッドではね返すと周りの選手は信じている。そのため、自陣のゴール前でこぼれたボールに対する反応が少し鈍い。日本はヘディングで競り負けても、体をうまく使って、こぼれるように仕向けることも大事だ。そのボールをうまく拾えれば、ビッグチャンスが訪れそうだ。(日刊スポーツ評論家)