日本代表MF堂安律(20=フローニンゲン)が貴重なPK弾で日本を4強へと導いた。

日本(FIFAランク50位)は準々決勝でベトナム(同100位)に大苦戦。後半12分、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR=ビデオ判定)によって獲得したPKを堂安が自ら決め1-0で競り勝った。準々決勝から導入されたVAR判定での泣き笑い。前半はDF吉田のゴールが取り消されたが、2大会ぶりの優勝へと前進。

28日の準決勝ではイランとの対戦が決まった。

周りの声は耳に入らなかった。ベトナムの大応援団から響き渡るブーイングの嵐。後半11分、VAR判定で自らPKを獲得。ゆっくりと歩いてペナルティーエリアに向かった堂安は冷静にボールを持った。MF南野に肩をたたかれ、ボールをセット。GKを最後まで見て左足を振り抜いた。ゴール右下に決まり、DF長友とダブルピースの即興パフォーマンスで喜んだ。

「入る気しかしなかった。自信満々で蹴った。勝つことが全てなので。日本を背負って戦っているので、勝てて良かった」

0-0の後半8分。ペナルティーエリア内で倒されたが、プレーは続行。ノーファウルの判定かと思われたが約1分45秒も経過した同10分、プレーが止まると、UAE人の主審が手でVAR判定の合図。会場のモニターには「PENALTY REVIEW」の文字。VARでPKを獲得した。

前半24分にはCKからDF吉田主将が頭で決めたかのように見えたが、センターサークルで待機しているとこの日最初のVAR判定に。吉田のハンドが認められノーゴールとなった。VARでの泣き笑い。前半のハプニング、格下相手の大苦戦。重苦しいムードも頼れる20歳が吹き飛ばした。

決意のPKだった。試合前、DF長友に“お願い”していた。「佑都君、僕を追い込んで下さい」。一発勝負の決勝トーナメントで自身の役割は十分に理解している。長友に自らの誓いを動画におさめてもらった。「僕がPKを取って日本を勝利に導きます。点を取れなかったら丸坊主にします」。相手に何度も好機を奪われながらも一瞬の隙を突いて果敢にペナルティーエリア内で仕掛けたからこそ、獲得したPK。日本のエースになるために、覚悟を体現した価値ある1点だった。

VAR判定でも、自身を追い込んだPKでも、ブレない強心臓が最大の武器。G大阪時代、高校2年生でACLデビューし、続けてJ1の舞台にも立った。クラブ史上最年少の16歳でプロと戦っていても、気後れせず、楽しくてしょうがないといった様子だった。ただ代表戦はまた別。昨年9月、大阪での日本代表デビューは「初めて緊張した」といい、思わず小学生時代の恩師に「どうしよう…」とメール。すると「俺の方が緊張してるから大丈夫」。こんな“激励”を受けると、いつも通りのプレーで魅了した。

今大会2点目。大会最年少ゴールはDF冨安に更新されたが、チームを勝たせ、4強へと押し上げた。中2日でも「全試合出たい気持ちでやっている。得点を取りたいので」と言ってのけた。優勝まであと2試合。アジアの頂点まで、20歳の主役候補が2大会ぶりの優勝へ日本を引っ張る。【小杉舞】