東京オリンピック(五輪)代表と日本代表を兼任する森保一監督(51)が、東京五輪メンバー入りへの「3カ条」を掲げた。U-23(23歳以下)で臨む五輪の登録メンバー数は「18」で、オーバーエージ(OA)枠は「3」。メンバーの絞り込みが本格化する前に、指揮官が求める五輪代表の「選考基準」を示した。目標の金メダルへ、同日本代表は年明け早々のアジア選手権(タイ)からサバイバルの幕を開ける。

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東京五輪への切符は、たった18枚。誰が“プレミアチケット”を手にしてピッチに立つのか。命運を握る森保監督だが、求めるものは「3つ」と明確だった。

(1)タフさ サッカー男子の初戦は7月23日。優勝には決勝前以外は中2日で、計6試合を戦い抜く必要がある。体力はもちろん、折れない精神力は欠かせない。「真夏の梅雨明けの一番暑い、おそらく酷暑の中で戦わないといけない。タフに戦えるメンタリティーとフィジカルの強さを持っていることは大切と思う」

(2)ポリバレント ベンチに残る選手は7人。通常の国際Aマッチより5人も少ない。対戦相手や試合展開で柔軟な采配ができるかは、勝敗の鍵になる。「ハードな日程で非常に過酷な気候条件の中で戦っていく中での登録メンバー数も考えると、GK以外は、スペシャルなものを持ちつつ複数のポジションをこなせる選手は必要かなと思います」

(3)犠牲心 昨年に自国で世界大会に挑んだラグビー日本代表が、W杯で日本国民を熱狂させた。森保監督も、その1人。「私自身も細かいルールが分からなかった中でスペシャルなものを持つ選手たちが犠牲心を持って戦うのは伝わってきた。わざわざ言葉で説明するわけではなく、プレーを持って示してくれた」。日の丸を背負って一丸となって全身全霊を尽くす姿に、自ら率いる代表を重ねた。「同じようなことを感じてもらえるようにしたい」

3つの条件を軸に選び抜いた精鋭に加え、金メダルには欠かせないものがもう1つある。「日本代表チームですけど“日本サッカーチーム”だと思っている」。日本中が1つになる「一体感」。列島が「ONE TEAM」となって本番に臨めるよう、今年も身を粉にして奔走する覚悟だ。「五輪に向けての全体的な融合は6月か直前の事前キャンプか。正しいことをやっていれば、目の前の活動に最善を尽くしていけば最後に成果は出ると思ってやっている」と信念を貫く。

「アンダー世代の選手が全員A代表として戦う、五輪経由でW杯に出場する。選手としてより高いところを見てもらえるようにアプローチしないといけない」と兼任監督らしく「日本代表」を俯瞰(ふかん)的にとらえてもいる。誰も見たことのない最高の景色を一緒に-。8日開幕のU-23アジア選手権から、挑戦の年が始まる。【浜本卓也】

○…森保監督はOA枠についての基準も明かした。枠を使用するかどうかは明言しなかったが、各世代をミックスして臨んだ昨年の南米選手権などを踏まえ「メリットはすごく感じることができた」と前向き。「トレーニングから全力で意図や効果を考えてプレーしてくれて、日本サッカーの歴史の継承や本人の経験も含め、若い選手に言葉でも伝えてくれる選手であれば。口先だけの、自分たちがやったことを前面に出して、プレーがおろそかになるOAの選手は選ぶつもりはない」と語った。

◆森保一(もりやす・はじめ)1968年(昭43)8月23日、長崎市生まれ。長崎日大高から87年に広島の前身マツダ入り。守備的MFとして京都、広島でもプレーし、03年に仙台で現役引退。J1通算293試合15得点、日本代表では国際Aマッチ通算35試合1得点。04年に指導者に転身。広島や新潟のコーチを経て12年から広島の監督を務め、3度のJ1制覇に導いた。17年10月に東京五輪代表監督に就任。18年4月の西野ジャパン発足に伴い、A代表コーチも兼任。W杯ロシア大会後の同年7月に、A代表の監督に就任した。家族は夫人と3男。愛称「ポイチ」。174センチ。