日本サッカー協会が、昨季限りで現役引退した元日本代表MF中村俊輔氏(44=横浜FCコーチ)に日本代表コーチ就任を打診していることが10日、分かった。主に攻撃の組み立てやセットプレーなどを担当するコーチとして、昨年末にオファーした。すでに元日本代表FW前田遼一氏(41)とはコーチ就任で基本合意。中村氏が再スタートを切る森保ジャパンのコーチとして最後のピースとなるのか、決断が待たれる。

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森保ジャパンが、天才レフティーに攻撃の組み立てを託す可能性が出てきた。日本協会幹部によると、昨年末に打診したという。W杯カタール大会で16強入りし、昨年末に日本協会と4年の契約延長で続投する森保監督は、続投会見で「ボールを握りながらチャンスを作るアタッキングサードで、シュートのチャンスをより多くするというところにたけている元選手のコーチを招聘(しょうへい)できれば」と話していた。中村氏は適任者といえる。

森保ジャパンは、メリハリをつけた攻守の切り替えや堅守速攻の戦術をベースにW杯で結果を残した。特に1次リーグではドイツ、スペインというW杯優勝国を下した。主導権を握られながらも粘り強い守備と少ないチャンスを確実にものにし、逆転勝ちを収めた。

今後の課題は格上の相手に対し、主導権を握る時間を増やすこと。そのために、どう攻撃を組み立てるか-。速攻だけでなく、パスを回して相手を崩す、このあたりの工夫などが課題となる。中盤でボールを奪った後の展開力が、W杯8強以上=新しい景色へのカギと、日本協会もみている。

そのための適任者として、中村氏に白羽の矢を立てた。現役時代はイタリア、スコットランド、スペインで経験を積み、日本代表でも司令塔として国際Aマッチ98試合24得点。長年、日本の中盤を任された。世界のサッカーを知り、セリエAのレッジーナ時代には強敵相手への対応力、常に優勝が義務づけられているセルティックでは強者の戦い、さらには中堅のエスパニョールの在籍経験がある。

攻撃時のセットプレーでも指導力を発揮してもらいたい意向がある。FKのスペシャリストとして申し分ない実績を持つ。キックの指導に加え、直接FKの際、壁をずらしたり崩したりする工夫も施し、ゴールにつなげてきた。セットプレーからの得点が少なかった森保ジャパンに新たな風を吹き込むことができる。

今季から横浜FCのコーチを務めており、現在は宮崎合宿に参加。指導者の目標については、引退当時に「これからはゼロで、少しずつ皆さんの経験を自分に吸収して作り上げていくところだと思うので、柔軟にやっていきたい」と話している。“代表復帰”となれば、指導者キャリアにも大きなプラスになるはずだ。就任となれば、26年W杯までの約3年半は代表活動に専念することになる。

また、日本協会は“ボールを握れる”名波浩氏と中村憲剛氏も候補にリストアップし、水面下で調査している。名波氏はベネチアでプレーし、Jリーグ監督の経験もある。中村憲剛氏は、川崎Fでともにプレーした後輩が現日本代表に多くいるのが強みだ。

森保ジャパンは3月下旬の国際Aマッチ2試合で再スタートを切る。日本協会幹部は「まだ時間がある。急いではいない。じっくり考えてくれればいい」と話す。早ければ今月19日の理事会までに、遅くてもスタッフミーティングなどが開かれる2月中旬をメドに、コーチの人選を完了させたい意向だ。

 

◆中村俊輔(なかむら・しゅんすけ)1978年(昭53)6月24日、横浜市生まれ。横浜ジュニアユース、桐光学園を経て97年に横浜M(現横浜)に入団。02年にレッジーナ(イタリア)-セルティック(スコットランド)-エスパニョール(スペイン)を経て、10年に横浜に復帰。その後、磐田-横浜FCと移り、昨季限りで現役引退。00年と13年にJリーグMVP。日本代表としてW杯には06年ドイツ大会、10年南アフリカ大会に出場。国際Aマッチ通算98試合24得点。178センチ、71キロ。