<アルガルベ杯:日本1-0米国>◇5日◇アルガルベ・スタジアム

 【ファロ(ポルトガル)=鎌田直秀】なでしこジャパンが歴史的勝利を挙げた。国際サッカー連盟(FIFA)ランキング3位日本は、1次リーグ最終戦で同1位米国と対戦。後半39分に途中出場のFW高瀬愛実(21=INAC神戸)が決勝ヘッドを決め、劇的勝利した。日本が初優勝した昨夏のW杯決勝のPK勝ちは記録上引き分け扱いのため、26度目の挑戦で米国から初勝利。3連勝でB組1位突破し、明日7日の決勝に進んだ。MF沢は体調不良でベンチを外れた。

 大黒柱・沢不在のなでしこジャパンが、初めて90分で世界NO・1の米国を破った。土壇場で大仕事をやってのけたのは、この日も途中出場だったスーパーサブのFW高瀬だ。防戦一方で迎えた後半39分。MF宮間の左CKがゴール前に上がると、21歳は狙いすましたかのように頭を振り抜き、ゴールネット右隅を揺らした。

 高瀬

 (CKから)決められて良かった。ゴールはうれしいけど、1点は1点という気持ち。まだ決勝があるので、決勝でも1点取りたい。最後までしっかり気を引き締めて戦い、優勝したい。

 試合後も頬を紅潮させたままの高瀬は興奮気味に振り返った。代表戦ゴールは一昨年5月22日、アジア杯タイ戦以来、約1年10カ月ぶり。自分でもびっくりしたのか、ぼうぜんとした高瀬にチームメートが抱きついて祝福しても、笑顔が引きつるほどだった。

 日本中が沸いた昨夏のW杯優勝。誰もがうれし涙を流す中、高瀬は1人悔しさで号泣していた。チームバスで宿舎に帰る間際、北海道に住む父に電話した。快挙を褒めてくれる父に高瀬は「私、悔しいよ~」とあふれる涙を抑えきれなかった。6試合で試合出場は準決勝スウェーデン戦のわずか4分。何もできなかった自分に「確かにあの輪の中にいたんですけど、蚊帳の外だったような感じだった」と心の底から喜べなかった。

 その後も代表では苦しい戦いが続いた。右MFなど、本来とは違うポジションで使われることも多く戸惑いを隠せなかった。W杯の21人枠から18人に減るロンドン五輪枠に対し、常に当落線上の自分を意識していた。「毎日が試練ですから。自分の立場はよく分かっています」。常に自分を奮い立たせた。

 若い力の成長がつかみ取った勝利でもあった。試合直前には思わぬアクシデントが襲った。沢が体調不良でスタジアムにも現れなかった。大事な一戦を前にチームには激震が走った。

 それでも日本は慌てなかった。立ち上がりは日本ペース。前半2分には宮間がミドルシュートを放ってリズムをつかむと同18分には、宮間からFW永里に絶妙のクロス。わずかにタイミングが合わずゴールはならなかった。優勝したとはいえ攻め込まれ続けた昨夏のW杯決勝から、たくましく成長した姿を見せることができた。26度目の挑戦で正真正銘、初めて最強米国を倒した。

 悲願のロンドン五輪金メダルへ、最高の手応えをつかんだ一戦となった。