<フットサルW杯:日本4-2リビア>◇7日◇バンコク・インドアスタジアム・フアマーク◇1次リーグC組

 フットサル日本代表が史上初の決勝トーナメント進出を果たした。1次リーグ最終戦でリビアを下し今大会初勝利を収め、勝ち点4でC組3位を決めた。三浦知良(45=横浜FC)は試合中に4度出場し、積極的なプレーで勝利に貢献。試合後は号泣する選手たちの中で、カズはフットサルの「代表愛」を感じ取っていた。競技の知名度アップのため、請われてフットサル界に飛び込んだカズ。夢にまで見たW杯の舞台に立ち、日本フットサル界にとって希望の1勝をつかんだ。

 後半残り2秒。プレーがストップし、時計も止まる。ベンチ前に立つカズは時計を見上げた。試合が再開して終了のブザーが鳴ると、カズは手を2回たたき、仲間1人1人と抱き合った。その時点で、初の決勝トーナメント進出をほぼ確実にする大会初勝利だ。

 日本は前半1-1で折り返し、後半に入ると徐々にペースをつかんでいった。開始5分に星が勝ち越しゴールを決め、さらに稲葉、小曽戸も続く。カズは前半に3回、後半に1回と、今大会最多となる4度の途中出場。大歓声を背に前半開始5分にコートに駆けだすと、あいさつがわりに4回の「またぎフェイント」を繰り出した。

 後半10分には2度続けてサイドを駆け上がり、ゴールへの執着心も見せつけた。「ゴールに接近する惜しいチャンスもあったし、前向きなプレーができたと思う」。合計6分16秒間の出場で、素早い動きで相手にジャブを食らわせた。

 試合後のロッカールームはお祭り騒ぎ。選手同士で記念撮影をしていると、右目を負傷して出場できなかった高橋が泣きだした。それにつられて、主将の木暮ももらい泣き。そんな光景の中心にいたカズは「いい雰囲気でしたね。最初はテンション高かったんですけど」。カズ自身も、大会直前にメンバーから落選した滝田(町田)と仁部屋(大分)への思いがこみ上げてきた。

 カズ

 彼らはずっと一緒にやってきた仲間だけど、自分は3週間ぐらいしかやってない。彼らのためにも、1次リーグ突破が最低条件だと、自分にプレッシャーをかけてやってきた。

 この日の勝利は、日本に残った2人のためにも必要なものだった。12年ぶりに日の丸を背負ったW杯で、大きな「代表愛」を再認識。

 四半世紀前にも“日本代表”としてコートを疾走していた。高校を中退し、ブラジル・ジュベントスの下部組織に留学していた当時16歳のカズは、クラブのフットサルチームにも所属。現地の日本人選手約10人と一緒に「草フットサルチーム」を結成していた。

 週末にはサンパウロ市内に集合し、白いシャツに円形の赤い布地を張った“日の丸ユニホーム”に袖を通す。それがない選手は、胸の部分に赤いフェルトペンで日の丸を描いた。そして地元フットサルクラブの練習場に乗り込み、「オレたちは日本代表だ」と名乗り対戦を申し込んだ。負ける時がほとんどだったが、勝つ時もあった。カズのフットサルの技術は「道場破り」で培われていた。

 11日からは決勝トーナメントが始まる。対戦相手はA組1位かB組1位のどちらかで、現状ではウクライナか優勝候補スペインとの対戦が濃厚だ。「ベスト16、8と、気持ちは上にいっています。フットサル界にとって1つの達成感は得て帰りたい」。カズのW杯は、ドラマチックに第2部へと走りだした。【タイ=由本裕貴】

 ◆日本の決勝トーナメント進出

 7日の時点でA、C組は全3試合を終え、残りの4組は2試合を消化。日本は勝ち点4でC組3位。決勝Tは各組3位チームの上位4チームが進出できる。日本は他5組の3位チームのうち、2チームを上回れば進出する。まずA組3位が確定したタイは勝ち点3。D組は最終戦でアルゼンチンとオーストラリアの勝ち点3同士が対戦(残る対戦は勝ち点6のイタリアと同0のメキシコ戦)するため、勝敗がつけばどちらかは勝ち点3。引き分けではオーストラリアが得失点差で日本に及ばない。日本はA、D組の3位を上回り進出が決まった。