その年齢差、なんと43歳。59歳5カ月になるカズこと三浦知良のJ3福島ユナイテッドFCが、16歳4カ月の三井寺眞の所属するJ1横浜F・マリノスと26日に天皇杯全日本選手権2回戦で対戦する。
■「一緒の時間にプレーしたい」
カズは1回戦の大山サッカークラブ(山形)戦に先発し、PKから2得点を挙げた。流れの中からも惜しいシュートを放つなど、ハットトリックを決めていてもおかしくない内容。まだまだ元気いっぱいだ。
その試合後、三井寺について問われると「(J1の)開幕戦も見ましたけど、素晴らしい選手。ピッチの上で一緒の時間にね、同時にプレーできたら、対戦できたらいいなと思います。でもピッチに立ったら年齢関係なく、お互いいい勝負ができたらと思います」と回答した。
そのカズの呼びかけに対し、三井寺も応じた。
「日本サッカー界のレジェンドだと思うので、自分ももし同じピッチに立てたらすごくうれしい」
そして初対面でどんな話をしたいか? と聞くと「やっぱり自分とは経験値が違うと思うので、今までの体験談だったりとか聞きたいですし、親にはユニホーム交換したらって言われるので。もし僕が出場できたら、そこはちょっと聞いてみたい。自分自身にとっても貴重なユニホームになると思いますし、そこは来週の目標に」と一ファンのような心持ちを吐露した。
「キングカズ」。王国ブラジルに単身で渡り苦難の末にプロとなり、アマチュアだった日本サッカーにプロとは何たるか? を伝え続けた先駆者。まさしく日本にサッカー人気を根付かせた最大の功労者だ。カズが競技を続けている限り、多くの異例の記録や出来事が生まれる。何より新たな選手たちにとっては、その言葉や取り組む姿勢から多くを学べる生きたお手本となっている。
■負傷に苦しむ時にメッセージを
同じ横浜の宮市亮にも話を聞いた。カズとの対戦には「もうめちゃくちゃ楽しみです」と破顔一笑した。
「ちょうど僕が(イングランド・プレミアリーグの)ウィガンに所属していた19歳か20歳の頃、ウィガンの田舎にあるスタジアムにオレンジのコートを着たカズさんがさっそうと現れた。試合を見に来てくれたんです。そこから何十年も経っても、自分もまだ現役として相まみえることができるのはすごく光栄だし、すごく楽しみです」
日本代表で関わりがあった香川真司を通じて出会ったという。そのカズとは折に触れ、連絡をもらえる関係になった。
「たまにというか、ケガした時なんかもすごくメッセージをくれたりしましたし、まだまだ頑張ってね、って合うたびに言ってもらえます。本当にカズさんがやっている姿というのは、ものすごく勇気付けられるし、(天皇杯では)得点も取っていますし、僕らのスタジアムではやらせないようにしたいと思います」
たび重なる負傷で大きな挫折や引退の危機に立たされた中、カズの言葉が背中を押してくれたのは間違いないだろう。レジェンドと呼ばれる男たちは、大きな影響力を持っている。
■プロ41年目、因縁のマリノス相手
カズは今も代名詞の「またぎフェイント」を時折見せるが、その“シザース”はドリブラー宮市も得意とするフェイントだ。この夏場の実戦形式のトレーニングでも鋭いシザースを使って突破する場面を目の当たりにした。カズがブラジルから日本に伝承した技の1つが、後世に続く選手たちのプレーにも色濃く反映されている。
ここはドリブラー対決ですね?と振ると、宮市は「いやいや足もとにも及ばないと思います」。その豊かな人間性も含め、リスペクトの念は尽きなかった。
カズがいることで日本サッカー界にはさまざまな化学反応が起こる。時にはネガティブな意見もあるが、選手たちはみなポジティブな見解を持っている。
挑戦し続ける姿勢。つまりプロとしての日常の取り組みや準備、心構えは時代に関係なく変わることがない。そこに行き着く。
何よりピッチに立てば年齢は関係ない。勝利を目指し、老いも若きも1つのボールを巡り、走るのみだ。
プロキャリア41年目、キングカズが挑む天皇杯。相手は91年度、92年度の決勝で敗れている因縁のライバル、マリノスというところも興味深い。8月26日の日産スタジアムが楽しみでならない。【佐藤隆志】




