<アジア大会:フェンシング>◇第4日◇22日◇韓国・仁川

 フェンシング男子フルーレで五輪2大会連続銀メダルの太田雄貴(28=森永製菓)が、個人戦で銅メダルを獲得した。準決勝で地元の声援を浴びた許俊(韓国)と対戦し、14-15で惜敗。3位決定戦がないため、銅が確定した。06年ドーハから3大会連続メダルとなった。東京五輪招致成功の歓喜から1年。それ以上の快感を求めて、16年リオデジャネイロ五輪での悲願の金を誓った。

 歓喜のガッツポーズは幻となった。14-14で迎えた準決勝の最終局面。太田の突きで15点目のランプが点灯した。「勝ちだと思った」。両拳を握りしめて、手のひらを上に向けて絶叫。しかしビデオ判定でポイントは取り消された。直後に地元の大歓声を浴びた相手にラストポイントを奪われた。勝利をつかみ損ねたが、潔く判定を受け入れた。

 「後から冷静に考えれば違う見方もあると思った。しかたない。アウェーで厳しいジャッジがくるかなと思ったが、フェアに戦えた。地力で負けたと思う」

 昨年9月7日。国際オリンピック委員会のロゲ会長が掲げた「TOKYO

 2020」の文字に、拳を握り手のひらを上に向けて泣いた。「感動的な場面に立ち会えた」。招致成功の立役者としてスーツを着る機会も増えたが「フェンシングは自分の居場所」と昨年10月に競技復帰を決めた。

 今年7月のアジア選手権は16位、8月の世界選手権も同21位。だがこの日、五輪と同じ総合大会、完全アウェーの中で目覚めた。「五輪以来の大きな舞台だった。競技者としての気持ちがよみがえった。3番は全然うれしくない」。許にはアジア選手権でも同じスコアで負けた。「同じ相手に14-14からの一本勝負で2度も負けるなんてあってはならない。何やってんだろ。競技者としては半人前」。

 4度目の五輪となるリオデジャネイロの目標は悲願の金しかない。「あれ(招致成功)よりも興奮して喜べるのはリオの金メダルなので」。16年は30歳で迎える。「だらだら6年、10年やるイメージはない。限られた時間でとりあえずこの2年で」と腹をくくった。「もうちょっとやんちゃな自分に戻らないと。大人になりすぎてしまった」。

 招致成功の歓喜から380日。アスリートとして負けじ魂を胸に、リオに向かう。【益田一弘】