山でよみがえる-。東京箱根間往復大学駅伝(来年1月2、3日)で連覇を狙う青学大が19日、神奈川・相模原キャンパスで練習を公開した。故障続きだった「山の神」の神野大地主将(4年)は「山の神 山で復活大作戦」と作戦名を命名し、山登りの5区での出場を明言した。春から故障が重なり、11月全日本で実戦復帰も大会後に左すねを痛めた。一時は箱根をあきらめかけたが、ギリギリで出場へのめどを立てた。

 午前中の公開練習に「山の神」の姿がない。ケガで出場が不安視される神野。報道陣がざわつく中、本人は早朝に19キロをしっかりと刻んでいた。原晋監督(48)が連覇へ「ハッピー大作戦」と銘打つ今大会。山登りの5区での好走で神と呼ばれた男は「1年間故障で苦しんだが“山の神 山で復活大作戦”でいきます」と再降臨を宣言した。

 「神走」の反動は想像を超えていた。2月に左大腿(だいたい)骨、6月に右すねを疲労骨折。実戦復帰した11月の全日本では8区8位と苦戦し、大会後には左すねに痛みが出る。思うように練習ができず、一時は箱根を断念しかけた。それでも「最後の箱根。あきらめたら一生後悔する」。昨年度の神と呼ばれた走りの映像を見て、自らを鼓舞しながら治療とリハビリを続けた。

 12月に入ってから、やっと本格的な練習ができるようになった。故障明けの急仕上げで、目標タイムは昨年度より約4分遅い1時間20分だが、そこは「山の神」。平地での感覚は、まだ10~20%の状態だが「山なら70%」と断言。「平地よりペースが遅いので、山の方が足への負担は少ない」と独自の理論を展開した。

 復活走へのシナリオもできている。序盤の平地の5キロは無理をしない。箱根湯本を過ぎたあたりからエンジンをかけ、ラスト10キロを切る小涌園付近からエンジンを全開にする。「小涌園で(他校と)並んでいたら、絶対に勝てる。山に関しては昨年と同様の力を出せる」と神の自信をみせた。

 苦しい練習中は、ゴールの大手町で、チームメートと連覇に沸くシーンを思い浮かべている。「1年間、主将としてチームに迷惑を掛けてきた。最後は恩返しをしたい。今はワクワク感があります」。箱根まで2週間。試練を乗り越えたとき、神野に再び「山の神」がほほ笑む。【田口潤】

 ◆神野大地(かみの・だいち)1993年(平5)9月13日、愛知県津島市生まれ。神守中-中京大中京を経て青学大入学。箱根駅伝は2年時に2区で区間6位。3年だった昨年度は5区で区間新記録を樹立し、初優勝に貢献。「山の神」と呼ばれた。164センチ、43キロ。

<神野のこの1年>

 ◆1月上旬 箱根5区で1時間16分15秒で走り、青学大の初優勝に貢献。金栗四三杯(MVP)も獲得。

 ◆2月中旬 宮崎での合宿中に左太ももに違和感を覚え、検査で左大腿骨の疲労骨折が判明。

 ◆6月中旬 日本学生個人選手権5000メートルで約4カ月ぶりに実戦復帰(12位)するも右すねが痛み、2度目の疲労骨折が判明。

 ◆11月上旬 全日本大学駅伝でアンカーとして5カ月ぶりにレース出場も区間8位。翌日に左すねに痛みを訴え、検査の結果、炎症で約1カ月間の離脱。