箱根駅伝を知り尽くす「ツウ」たちが、来年1月2、3日の第92回大会を前に独自の視点で語る連載「箱根のミカタ」第2回は、早大を10年度に駅伝3冠に導いた渡辺康幸前監督(42)の登場です。今年4月から住友電工陸上部で指揮を執る名将に、その卓越した目で期待のランナーを挙げてもらいました。

 青学大の神野大地君に関心が集まっていますが、個人的には駒大の馬場翔大君が昨年度のリベンジをどこの区間で果たせるかは注目です。昨年は山登りの5区で失速した悔しい経験があります。彼はマラソンタイプ。スピードの部分では厳しいですがスタミナで勝負できる。

 大きな挫折を乗り越えた選手は強い。糧に変えた選手はいっぱいいます。教え子では竹沢健介ですね。1年生ながらエースとして期待された06年大会で、初年度は2区で11位。その経験をバネにしてその後は3年連続で区間賞を獲得しました。前年度にブレーキした選手は同区間に使わないセオリーはあります。どうしても嫌な印象がつきまとう。そうなると馬場君は登りはないのかな。でも逆に平地で彼の良さも出るかもしれない。駒大がどういうオーダーを組むのか楽しみですね。

 1区での主導権争いの重要性は年々増しています。各校がエース、準エース級を投入してくる。その中で早大の中村信一郎君が出てきたら面白い。私が監督時代に高松工芸高での走りを見て、大いに伸びしろを感じた選手。練習で強くて試合で力を発揮できなかったのが、心理学の先生をつけてメンタルを鍛え、今年ブレークしました。

 台風の目になりそうなのは中央学院大です。初の予選トップ通過で本戦に進みましたが、日本人最高タイムを出したのが潰滝大記君。日本選手権3000メートル障害覇者ですが、本来同種目の選手は長い距離が走れないイメージがあります。ハードルの技術があると途中で休めるので、走力よりも器用な選手がやる傾向が比較的強い。長い距離は戦えないタイプが一般的な中で、彼は珍しいタイプですね。【取材・構成=阿部健吾】

 ◆渡辺康幸(わたなべ・やすゆき)1973年(昭48)6月8日、千葉市生まれ。中学で陸上を始め、市船橋高を経て早大進学。箱根のエースとして活躍し、3度の区間賞と1度の区間新をマーク。96年エスビー入社、02年に引退。04年4月に早大競走部の監督に就任。10年度は出雲、全日本、箱根駅伝と3冠獲得。

 ◆馬場翔大(ばば・しょうた)1993年10月23日、岡山県生まれ。倉敷高→駒大。全日本大学駅伝6区区間賞。

 ◆中村信一郎(なかむら・しんいちろう)1993年4月14日、香川県生まれ。高松工芸高→早大。日本インカレ1万メートル5位。

 ◆潰滝大記(つえたき・ひろのり)1993年5月8日、和歌山県生まれ。笠田高→中央学院大。関東インカレ(2部)5000、1万メートル2冠。