日本男子トライアスロンが、新時代に突入した。表彰台を見て、それを実感した。

4月24、25日の2日間に渡り、広島県廿日市市でトライアスロン・アジア選手権が開催された。エリート男子の表彰台に上がったのはニナー賢治(27=NTT東日本・NTT西日本)、北條巧(25=博慈会・NTT東日本・NTT西日本)、古谷純平(29=三井住友海上)。日本の若き力が3位まで独占したのだ。この光景には胸が熱くなった。


アジア選手権で優勝したニナー賢治(中央)、2位の北條巧(左)、3位の古谷純平(右)
アジア選手権で優勝したニナー賢治(中央)、2位の北條巧(左)、3位の古谷純平(右)

2000年シドニーオリンピックから正式種目として採用されたトライアスロンは、ここ数年、世界的にトップアスリートの人口も増え、レベルも上がっている。他競技とトライアスロンの「二刀流」であったり、他競技のオリンピアンがトライアスロンに転向するというケースもあり、ここ数年、劇的に進化している。

一例を挙げると、イギリスのトップ選手、アレックス・イー(Alex Yee、23)はイギリス陸上選手権1万メートルのチャンピオンだ。

そんな中、近年“日本の男子は弱い”と言われてきた。2004年アテネ五輪から活躍してきた田山寛豪、山本良介、細田雄一選手らの世代は、世界シリーズ戦やワールドカップに出場し、第1集団の中で展開できるほど選手層が厚かった。しかし、その次の世代では選手層に課題があった。


日本男子のトライアスロンを引っ張ってきた、左から田山、山本、細田
日本男子のトライアスロンを引っ張ってきた、左から田山、山本、細田

2016年リオデジャネイロオリンピックは田山選手1人の出場。入れ替え候補選手として、次世代を担う古谷が現地入りした。立場は違うが、両者とも「日本男子を強くしたい」という気持ちは同じだった。

その田山選手は2017年に引退。古谷「1強」となる懸念もあった。だがそこに新星が現れた。2018年日本選手権で、大学4年の北條が一気に日本チャンピオンに上り詰めた。このニューカマーの存在が、日本男子全体に火をつけた。

そしてもう1人、強者が現れた。オーストラリア出身で、この4月に日本国籍を取得したニナーだ。昨年11月の日本選手権では、国籍取得見込として出場し、初出場初優勝を果たした。

今回のアジア選手権で、3選手は順位だけでなく、高い評価ができるパフォーマンスを見せてくれた。リーダー的存在である古谷は「個人個人が己を高め、その結果、チームの一体感がうまれた」と話した。まさしく理想的な「One for all, All for one」の形が形成された。

次世代のU-23、ジュニア世代にもポテンシャルの高い選手が多く、世代が途切れていないところも今後の強化につながってくると感じる。トライアスロンは個人スポーツではあるが、オリンピックとなると、最大3枠の国別出場枠獲得のため、世界と戦える層の厚さもポイントとなってくる。

間近に迫る東京オリンピック。しかしその先にある2024年パリ・オリンピックもあまり時間がない。ポイント獲得レースは通常なら五輪の2年前、つまり来年から始まる。

選手のインタビューやSNSでの発言を聞いていると、各選手が互いの良い点を認め合い、高め合っているように感じられる。

日本男子勢は、世界と比較しても、スイムとバイクのパフォーマンスが非常に高い。展開によっては、世界の舞台で日本人選手が上位を走る姿を見られる日も、そう遠くないと感じる。トライアスロン界の未来が本当に楽しみになってきた。

(加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン代表)