かわいらしい声が、体育館中に響き渡った。2月17日、島津アリーナ京都。史上最年少で卓球Tリーグに参戦したスーパー小学生の松島美空(みく、9=京都カグヤライズ)だ。眼前に立ちはだかる、21年東京オリンピック(五輪)ミックスダブルス3位のチェン・イーチン(トップおとめピンポンズ名古屋)にもおくすることなく、4ゲームで合計27ポイントを奪取した。

観客を沸かせる熱いマッチを繰り広げたが、その裏には、父・卓司(たかし)さんのサポートがあった。

日本リーグや全日本実業団で優勝を経験している卓司さん。松島のコーチでもあり、リーグ戦出場を受けて細かくアドバイスをしていた。

「3球目を狙いにいこう」。そう提案し、1本目、2本目…と、それぞれの狙い所を具体的に伝えた。

最初のゲームで、その戦術が、見事にはまった。五輪メダリストに試合開始から4連続ポイントを挙げ、さらに3ポイントを追加。7-1と、相手を大きく突き放した。

順調な滑り出しに、松島と同じく、相手の顔が見える位置に腰を据える卓司さんは、1球ごとに立ち上がって声を送った。1ゲームを先取。もしかして…。9歳の快進撃に、期待が膨らんだ。

結果は、ゲームカウント1-3だった。2、3、4ゲームを落として逆転負けを喫したが、リーグ戦で初めて、1ゲームを奪取できたことは、本人の自信につながった。

「出るならチェン・イーチン選手とやりたかった」。松島父娘は、口をそろえてこう話す。

リーグ戦に出場するのは、昨年10月22日にリーグ最年少出場を記録した神奈川戦で張本美和と対戦して以来2回目。ようやく手にした切符。リーグ戦以外で出会う機会の少ない五輪経験者との対決は、父娘共通の願いだった。

予想通り、この一戦は価値ある一戦となった。サーブは格上選手にも効く。世界トップクラスの球に対応できるブロックも持っている。あとは、もっとコースを狙えるようになれば-。

念願の相手と対戦して多くを学んだ9歳は「『オリンピック金メダル』って言ってるけど、それくらい強いんだなって自分でも勉強になった。オリンピックで金メダル目指すなら、もっともっと頑張らないと難しいんだなと思った」。

一方、ともに戦った卓司さんは「すごい頑張った」と興奮気味。好調な立ち上がりに「最初とととんってうまくいって、『お、お、お』という感じでした」と振り返る。

それでも、一度「勝ち」が見えたがために、悔しさもあった。劣勢に陥る娘を見ながら「もっと違う声かけができたんじゃないか」と悶々(もんもん)としていたという。反省の色を浮かべるその表情には、松島への愛情があふれていた。

チームに入ってから約8カ月。そばで見守ってきた卓司さんは「世界のトップとか、オリンピックを経験した人と一緒に生活することで、試合前の準備の方法とか、練習に対する気持ちとか、試合態度とかを見本として見せてくれてる。そういう選手といないと学べないことを学べてて、美空もそれが当たり前になってきてる」と、日々アスリートらしくなる娘の成長ぶりに目を細め、環境を整えてくれたチーム、監督に改めて感謝を伝えた。

父娘で躍進を続ける松島家。今後が楽しみだ。【竹本穂乃加】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「We Love Sports」)

試合中の松島美空(2023年2月17日撮影)
試合中の松島美空(2023年2月17日撮影)