新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、欧米のゴルフティーチングにおいて、今まで以上にオンラインゴルフレッスンは欠かせないものになっている。


■離れた場所でも指導が受けられる


スマートフォンで気軽にスイングを動画撮影して送ることができるので、わざわざスクールや練習場に通わなくてもいいので感染リスクを減らすことができる。


ジム・ハーディー(右)、マット・クーチャーのコーチでプレーン・トゥルースの共同代表のクリス・オコネル(左)と筆者
ジム・ハーディー(右)、マット・クーチャーのコーチでプレーン・トゥルースの共同代表のクリス・オコネル(左)と筆者

オンラインレッスンのメリットはなんといっても場所や時間に縛られず、離れた場所にいるコーチの指導が受けられることだ。自分のスイング動画をコーチのもとに送ればマンツーマンと同じようなレッスンを受けられる。地元のクラブプロ以外に選択肢を広げることができるので、遠く離れた有名コーチに指導を受けることもできる。やる気さえあれば、日本のアマチュアゴルファーでも米国のコーチから指導を受けることも可能だ。


■PGAでも当たり前に


このようなオンラインを通したレッスンは、アマチュアだけでなくPGAツアー選手とコーチの間でも当たり前になっている。

米国内を転戦するPGAツアー選手はコーチを試合に帯同できないとき、自分のフォームの映像を遠く離れた場所にいるコーチに送りアドバイスを求める。コーチはテキストメッセージやビデオ通話など、その時の状況によってコミュニケーションツールを変えながらアドバイスをする。

普段からオンラインでやりとりをすることで、お互いの考えを理解することができるし、方向性がブレずにスイングを改善していくことができる。



1対1のレッスンだけではなく、セミナー方式や講義方式のティーチング動画も増えていて、YouTubeを探せばいくらでもゴルフに関するレッスン動画を見つけることができる。ただし、こうした動画は玉石混交。十分に気を付けて信頼できる動画を選んでほしい。


■オンラインを通じて良質な知識を


米国の巨匠コーチの1人に、ジム・ハーディーというコーチがいる。「The Plane Truth for Golfers」という本で提唱した「スイングには1プレーンスイングと2プレーンスイングの2つのタイプがある」という理論で有名だ。私も4年ほど前、ハーディーが主宰する「プレーン・トゥルース」のティーチング・プログラムを受講して資格を取ったが、プログラム受講者向けのオンライン動画コンテンツが充実しているのが特徴だった。

オンライン動画は100コンテンツほどあり、1プレーンスイングと2プレーンスイングの構築方法やそれぞれのスイングの直し方など細かく細分化され、非常にクオリティーの高いものだった。ティーチング・プログラムは1日9時間×3日で終わるが、その後も動画で復習できるため非常に役に立った。


座学をみっちり行う
座学をみっちり行う

この動画が本当に役に立ったのはテストの時だった。以前、米国人のコーチにプレーン・トゥルースのティーチング資格を取得したという話になった時、「よくあの難しいテストに受かったな」と驚かれた。ティーチング・プログラムによってはテストをしなかったり、簡単な設問程度のものがあるが、プレーン・トゥルースのテストは「落とすためのテスト」だった。

テストはオンライン動画を見ながら行う形式なのだが、応用問題ばかりなので、動画の内容をしっかりと理解したうえで、自分の頭で考えることができないと答えることができない。問題は100問ほどあり、80%正解しないと合格しないのだが、最初のテストでは40%ほどしか正解できず不合格。追試は2回まで受けられるのだが、1回目の追試も60%で不合格。背水の陣で挑んだ2度目の追試でやっと合格することができた。

問題が非常に難しいため、動画コンテンツを何度も見返さなければいけなかったが、これが理論を理解するうえで役立ったと思う。プレーン・トゥルースは受講者に何度も動画コンテンツを確認させ、理論の理解度を高めるようにテストを難しくしているのかもしれない。


■復習するたびに気づく


インターネットの普及で、一般の人でもティーチングに関する高度な知識を簡単に手に入れられるようになったが、1度見ただけでわかったような気になってはいけない。知っていることと使えることには大きな差があるので、自分に役立ちそうな知識は繰り返し学んでほしい。復習をするたびに気づくことがあるし、そこから応用に広がる可能性もある。

アマチュアがコーチと同等レベルの知識を身に着ける必要はないが、スイングの基本的な動きや、スイング理論の根本を学んでおけば、レッスンを受けたときに、コーチの言いたいことを理解する手助けとなる。

オンラインが発達した時代の恩恵を十分に活用して、良質の知識やスキルを身につけよう。

(ニッカンスポーツ・コム/吉田洋一郎の「日本人は知らない米PGAツアーティーチングの世界」)

◆吉田洋一郎(よしだ・ひろいちろう)北海道苫小牧市出身。2019年度ゴルフダイジェスト・レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞。欧米のゴルフスイング理論に精通し、トーナメント解説、ゴルフ雑誌連載、書籍・コラム執筆などの活動を行う。欧米のゴルフ先進国にて、米PGAツアー選手を指導する100人以上のゴルフインストラクターから、心技体における最新理論を直接学び研究している。著書は合計12冊。書籍「驚異の反力打法」(ゴルフダイジェスト社)では地面反力の最新メソッドを紹介している。書籍の立ち読み機能をオフィシャルブログにて紹介中→ http://hiroichiro.com/blog/