2年連続賞金王今平周吾(29=ダイヤ)がアベレージ80台を目指すアマチュアゴルファーにヒントを伝授する「ゴルフステップアップ 今平周吾 賞金王の技」も今回が最終回。生徒役で技を伝授された元ロッテ捕手で現在本紙評論家の里崎智也氏(45)は6年ぶりに自己ベストを更新。その勢いとあの手この手を使って今平に挑むも、男子プロの実力の前になすすべなしだった。対戦を振り返りつつ、1年間を振り返ってもらった。(以下敬称略)

レッスンを終え、がっちり握手する今平周吾(右)と里崎智也
レッスンを終え、がっちり握手する今平周吾(右)と里崎智也

-まずは対戦を振り返ってですが

今平 引いたくじが結構よかったので楽にできましたが、あれが違うクラブだったら難しくなっていたかもしれません。

里崎 ホントにね。「このショート通常なら何番ですか?」「9番です」で、その通り9番を引きますからね。

-賞金王になるには、技術はもちろんですが運も必要だと思います。今日実際にみていて、運も持っていると実感しました

今平 どうなんですかね。あまり気にしていませんでしたけど(笑い)。でもやっぱり、運も必要でしょうね。

里崎 落合さんは3冠王になるために一番難しいのは運だといっていました。自分がベストを出しても、他の人が1つでもベストを上回ったら取れない。だから運も必要だって。ゴルフも自分がいいスコアを出しても、他がそれよりいいスコアを出したら勝てないですもんね。

-もし3本ではなく2本だったら?

今平 そうですね。2本だったら難しかったと思います。好きなクラブを選んでいいならいけるかもしれませんが、毎回引いてだと難しいですよね。

-男子プロの壁は

里崎 厚かった。でも楽しかった。こんなことができる機会もないし、見てるだけでも楽しかった。

-実際に男子プロの技をみてどうでしたか?

里崎 もうファンタジーですよ!

今平 ファンタジー…(笑い)

里崎 やってみて分かったのは、あれではハンディにならないってこと。男子プロのレベルは尋常じゃなかった。

-6番でパターを開いてのバンカー越えショット。あの発想はアマチュアにはない

6番ホールでの今平の超絶ショット。見事パターでバンカー越え
6番ホールでの今平の超絶ショット。見事パターでバンカー越え

今平 そうかもしれませんね。

里崎 しかもそこそこ止まっていましたしね。

-普段パターを開いてなんて絶対やらないですよね

今平 やらないですね。やったことがなかったけどと思い付いた。

里崎 6番のようなホールがもっと見られるはずだったんだけどなぁ~! あのホールだけは楽しかった(笑い)。

-1年間を振り返ってですが、里崎さんは今回のレッスンを受けて、自己ベストを更新したとのことですが

里崎 そうですね。43、35の78がベストだったけど、39、37で76が出ました。

-アンダーはすごいです

里崎 いやそれが2ボギー、1アルバトロスだったんです。

今平 えっ!? 僕はアルバトロスの経験はないです。

里崎 まぁ、まぐれですから。打ったら入っちゃった(笑い)。

-自己ベスト更新の要因は?

里崎 完全にアプローチですね! 外してもほぼ寄ったんです。パターもスコスコ入りました。

-アベレージゴルファーのパーオン率は2~3割。いかに寄せワンでパーを拾えるかが重要ですよね

里崎 8番のショートみたいに、近くまで行くけど乗ってない。だから、どれだけ寄せワンで拾えるかが勝負になってくる。

-今日の里崎さんのゴルフを見て「うまくなっていた」といっていましたが、具体的にどの辺ですか?

今平 ティーショットも安定していたし、アイアンも、悪くてもグリーン周りにはいっていた。だから悪くてもボギーで、良ければパーを取れていた。バーディーチャンスも打てたりしていましたよね。

-レッスン前はアウトサイドインでつかまって左に出てしまうことが多かった。でも対戦ではほぼ出ていませんでした

今平 そうですね。

里崎 「左手の甲を下に向ける意識で」のおかげです。ショットも、それと左肩を回すことを意識すれば球は圧倒的につかまるのが分かったし、飛距離も伸びた。レッスン前は9番のドライバーショットで池に届かなかったのが、レッスンを受けた瞬間に届いていたし、対戦でも届いていました。あとは、どこまで再現性を高められるかだけど、これは練習しかない。「量より質」の練習でヘタクソがトップアスリートになることはないので(笑い)。

-レッスンでは今平プロのアドバイスを受けるとイメージを作ってほぼその場でできていました

今平 教えたことをすぐに対応できて、教えていても楽しかったし、アプローチは今日みていてものすごくうまくなっていたので、練習したんだなって思いました。

-最後に里崎さんと今平プロから読者へのメッセージをお願いできますか?

里崎 1年間やらせてもらって、本当に分かりやすかった。6年間止まっていた自己ベストも更新できました。あとはどこまで素直に聞けるかだと思います。結局だめな人は試さない。新しい技術や知識を得たとき、試す前に拒否する。1回やってみて合わなければやめればいいんです。やってみないことには、それすら分からないですから。

今平 コンスタントに80台を出すことも大事ですが、それよりも楽しんでゴルフをするのが一番だと思います。スコアだけがゴルフではないので、スコアに縛られず、ゴルフ自体を楽しんでみてもいいと思います。アマチュアゴルファーは考えすぎてしまうようにもみえるので、スコアを出すために1度スコアを忘れて、ゴルフを楽しんでみるのもいいかもしれませんよ。

◆今平周吾(いまひら・しゅうご)1992年(平4)10月2日、埼玉県生まれ。08年埼玉栄高校1年の時、松山英樹らを抑えて日本ジュニアで優勝。翌年高校を中退して渡米、IMGゴルフアカデミーで2年間腕を磨く。11年にプロ転向。チャレンジツアー賞金王の資格で出場した15年シーズンに初シード獲得。17年「関西オープン」で初優勝。昨年9月のフジサンケイ・クラシックなどツアー5勝。18、19年と2年連続賞金王を獲得。20-21年シーズンは9位。165センチ、67キロ。

◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)、帝京大を経て、98年ロッテを逆指名しドラフト2位で入団。06年第1回WBCで優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京オリンピック(五輪)出場。06、07年ベストナインとゴールデングラブ賞。オールスター出場7度。実働15年で通算1089試合、3476打数890安打(打率2割5分6厘)、108本塁打、458打点。14年に引退、15年から本紙解説者に就任。19年には自身のYouTubeチャンネルを開設。ゴルフのスコアはアベレージ「85」。175センチ、94キロ。

◆取材・構成=川田和博

◆撮影=鈴木正人

◆協力=飯能グリーンCC(埼玉)