黄金世代の実力派女子プロゴルファー大里桃子(24=伊藤園)が100切りを達成し、アベレージ90台を目指すアマチュアゴルファーにヒントを伝授するゴルフレッスン「『ちゃんもも先生』目指せアベ『90』台」。ゴルフレッスン面恒例の対戦企画には元広島のプロ野球選手で同郷の前田智徳氏(51)が名乗りを上げた。レッスン面で大里プロの技を解説してきたスポーツインダストリーゴルフスクールダイレクター新井真一プロ(59)はMCと解説を担当する。対戦を前に、2人のゴルフについて紹介する。(以下、敬称略)

対戦を前に健闘を誓う大里と前田氏
対戦を前に健闘を誓う大里と前田氏

会場となる千葉・グレートアイランド倶楽部は、大里プロが所属する伊藤園が主催する女子ツアー「伊藤園レディスゴルフトーナメント」の舞台でもある。対戦は同ゴルフ場インコースのトーナメントティー(3352ヤード)で行う。

新井 そもそもおふたりは同郷だとか?

大里 そうですね。同じ熊本県出身で、しかも20分くらいのところなんですよね。

前田 熊本県玉名市で、大里プロとは同じ水で育っています。

 
 

新井 前田さんはゴルフの腕前も素晴らしく、2021年の日本ミッドアマチュアゴルフ選手権で8位を獲得された実力者とのことですが。

前田 去年の話ですね。でも、今年は惨敗で…。

新井 とはいえ、今年のマルハンシニアでは、あの難しい太平洋クラブ御殿場コースで1アンダーを出して、ベストアマ獲得でしたよね。

前田 8月までは良かったんです。でも、9月以降は状態が非常に良くないので、大里プロと地元の話をするまでいけないかもしれません(笑い)。

大里 私もシーズンが終わってオフに入って、気持ち的に「ちょっと…」ということもあって本調子が出るかどうかわからないので…。

前田 プロはそんな感じでやっていただいて、自分は迷惑をかけないようにしたいですね。でも、なかなかこんな機会はないですからね。実家の近所から、こんなに素晴らしいプロが出るなんて、非常にうれしく思っています。陰ながら、勝手に応援させていただいています!

前田は元プロ野球選手らしく、ドライバーの平均飛距離は280ヤードを誇る。対する大里プロは240ヤードと、40ヤードの距離差がある。だが、対戦ルールはハンディなしのガチンコマッチプレーで決定。対決編は次回の23年1月10日から連載する。さて、どっちが勝つんだ!?

■前田氏ゴルフは右打ち、ストイックにアプローチ練習

「孤高の天才」。前田氏の現役時代の異名だ。89年ドラフト4位で広島に入団すると、91年から4年連続のゴールデングラブ賞獲得。また、通算2119安打も達成し、まさに球界のレジェンドだ。そんな前田氏は、野球は左打ちだが、ゴルフは右打ち。その理由は、ゴルフを始めたきっかけまでさかのぼる。

07年9月1日、中日戦で2000安打を達成した前田
07年9月1日、中日戦で2000安打を達成した前田

「プロ野球選手はシーズンオフになると、もれなくゴルフに行きます。僕も先輩からお古のクラブをもらって行きましたが、皆右打ちで、ゴルフクラブが右用しかなかった。それで、右打ちでやるしかなかったんです。スコアは130くらいでしたね。こんな楽しくないスポーツはなんだって思いましたね(笑い)」

本格的にゴルフにのめり込んだのは95年のアキレス腱(けん)断裂がきっかけとなった。

「リハビリで医者から歩けと言われて、ただ歩くのもつまらないですよね。当時はヘタだったので、ゴルフってヘタのほうが歩くでしょう。それで始めたけど、どうせやるならうまくなりたいなと思ってのめり込んだ」

プロ野球選手がセンスがあるのは分かる。だが、一体どんな練習をして上達したのだろうか?

「僕は我流ですが、まずはアプローチとパターでスコアを縮めました。ドライバーは本当に恐怖症なので今日、ちゃんもも先生に教えて欲しいです(笑い)。アマチュアのゴルフはドライバーで決まりますからね。でも、やっぱりアプローチの100ヤード、80ヤード、50ヤード、30ヤードは一生懸命練習しました。グリーン周りやパターは早めにゴルフ場に行って、芝からの感覚を染み込ませることを心がけています」

野球はもちろん、ゴルフにもストイック。レンジで実際に打つ弾道を見て、「これはもしかして…」と感じた。

■大里桃子、今年を振り返る

大里の22年シーズンメルセデスランキングは34位、年間獲得賞金ランキング32位、平均ストロークは71・8142で33位となった。トップ10フィニッシュは4回で、最高位はスタンレーレディスの5位。そんなシーズンを振り返ってもらった。

「シーズン序盤はアプローチとパターに悩まされた。ショットも調子が良くなく、4月くらいまでは、ショットの立て直しが課題でした。序盤は出ばなをくじかれる感じで、思っていた流れに乗れなかった」

スタンレーレディース初日の1番、ティーショットを放つ大里桃子(22年10月7日撮影)
スタンレーレディース初日の1番、ティーショットを放つ大里桃子(22年10月7日撮影)

夏場のmeijiカップからニトリレディスまで、4連続予選落ちもあった。

「あれはもったいなかったですね。しかもあれ以降、ドライバーの飛距離が落ちてしまい、いろいろ試しているうちにショットも悪くなって、大きなミスも出るようになってしまった。後半戦も毎戦不満が続くシーズンでした」

だが、その中でもシード権は確保した。

「それは最低限ですから。リコーカップに出られたのも最低限で、不満の多い1年間でした」

そんな中でも収穫はあった。

「パターが気持ち悪かったときに今までやってきたことをすることで、長引かずにすんだのは良かったですね」

今年はショットとパットの調子がかみ合わなかった1年だという。

「特に後半はパターが一筋ずれていることが多かった。かみ合ったのは伊藤園の最終日だけ。エリエールは予選落ちしたけど、ショットは今年最も良くて、優勝争いをしてもおかしくないくらいチャンスについたけどパターが入らず、『なんで私は落ちたの?』という感じでした。今年は体力的よりも、神経が疲れるゴルフが多かったです」

オフの課題はドライバーだという。

「アプローチ、パターにプレッシャーがかかるのは、ドライバーが曲がってしまうことから始まる。『次を寄せなくてはならない』『これを入れなくてはならない』となるので、やはりティーショットが肝心だなと実感した。ドライバーが今年ほど悪くなければ、もう少し楽にゴルフができると思っています。効率のいいスイングができれば、飛距離も戻ってくると思っています」

 
 

◆取材・構成 川田和博

◆撮影 垰建太

◆協力 グレートアイランド倶楽部(千葉)