カルチャーショックを受けた。年明けからゴルフ担当になって半年。アース・モンダミン・カップで、ようやく今季の国内女子ツアーが開幕した。同大会と、その後の取材で見聞きした、女子プロゴルファーの言動は、驚くほどストレートで、力強かった。

この10年、記者として担当していたのは相撲とサッカー。数えるほどの、なでしこジャパン取材以外、取材対象は男性ばかりだった。バンクーバー五輪フィギュアスケートの浅田真央ら以来、10年ぶりとなる女性アスリート取材だったが、以前と変化も感じた。

アース・モンダミン・カップは、大会第2日を終えて渋野日向子が予選落ちした。

渋野は「このオフにやってきたことが、全て意味なかったんじゃないかな、と思うような内容でした。練習をたくさんしていても、試合でできないと意味がない。死ぬほど練習しないといけないと思った」と語った。

練習通りにできなかった自分への怒り、悔しさ、雪辱への思い-。心の内をさらけ出すように話していたのが印象的だった。

大会最終日には、昨季2度目の賞金女王となった鈴木愛が、感情を前面に出した。第2、3ラウンドで池につかまり、大たたきした9番パー3で、ティーショットをグリーンに乗せると大はしゃぎで喜んだ。かと思えば、プレーオフで敗れて2位に終わると「勝てないと意味がない」と、悔しさを隠す様子もなく、素直に話していた。さらに「本来、優勝を争うようなゴルフじゃなかった」と、調整不足を反省していた。

他にも大会後、言動が印象的だったのは、ともに渋野と同じ98年度生まれ「黄金世代」の原英莉花と河本結だ。原は2打差の5位だった開幕戦から、約1週間後にインタビューした時の言動が特徴的だった。開幕戦最終日は、首位と7打差でスタートし、14番パー5でドライバーのティーショットをミス。ボギーとしたことを、試合直後に後悔したと語った。

そこで終わるかと思いきや「この話、もう少しいいですか」と、自ら切り出した。

「残り5ホールで『ここが勝負』と思って(ドライバーを)選んだので、今はしょうがないと思っています。追いかけている身なので、あそこでドライバーを選んで、バーディーチャンスにつけられるようにならないと。ドライバーに磨きをかけるよう頑張りたい」と続けた。

誰かに話すことで、自分の考えを整理しているようだった。何より、報道関係者に話すことで退路を断ち、次への成長につなげる決意表明のように感じた。

今月14日に、主戦場とする米国に出発する際の河本も、決意表明をしていた。

「私の夢は5大メジャーを制覇すること。でも今の自分は、それを断言できるような実力ではない。米国で心もゴルフ面も強く成長していけば、必ず成し遂げられる目標。死ぬほど練習します」

今季から米ツアーに参戦したばかりで、5大メジャー制覇という究極の目標を掲げれば、SNSなどに心ない誹謗(ひぼう)中傷を書き込まれるかもしれない。それでも語った勇気、夢を実現させたい気持ちの強さを感じた。

10年前から、時代が変わったのか、女性が変わったのか、日本人が変わったのか。少なくとも今の日本人女子プロゴルファー、特にトップ選手の多くは、ストレートな言動が目立っている。

渋野は予選落ちから1週間後、別の会見で「(開幕戦が)終わってから『オフにしていたことが無駄だったのかな』という発言をしてしまったんですけど、オフにやっていたことが、今、結果に出るのではなく、もっとこれから先に出したいという思いが、後々出てきて、そんなに焦らなくてもいいのかなと思いました」と話した。冷静になってからのコメントだが、雪辱への思いという、最も大きな部分はむしろ強調された気がした。

はっきりと言葉で伝える-。これは昨年まで担当していた大相撲とは、正反対のスタンスと感じる。進退の懸かった本場所で、元横綱稀勢の里(現荒磯親方)は取組後に無言か、せいぜい「そうですね」の一言ぐらいしか発していなかった。負けた取組後なら「何を話しても言い訳になる」、勝った取組後なら「相手に失礼」というのが理由だ。フィギュアスケートの浅田も、悔しくてもグッとこらえ、こらえきれずに涙を流すといった、稀勢の里と同タイプ。どちらも国民的人気のアスリートだった。

話す分量が多いのと少ないのでは、どちらが正解ということも、どちらが素晴らしいということもない。元稀勢の里も、今では分かりやすい、冗舌なテレビ解説に定評がある。

ただ今回気付いたのは、今の女子選手は何げない一つの言動にも、覚悟と責任を持って表現しているということ。SNSなどを通じ「共感の時代」とも言われる現代。プレー以外にも、言動で多くの人を引きつける国民的人気のアスリートは、女子ゴルフ界から誕生するかもしれない。

YouTubeで生中継された開幕戦の4つのチャンネルのうち、選手インタビュー専門チャンネルが、一定の視聴者を集め続けていた理由が分かった気がした。【高田文太】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)