今年の国内女子ツアーも、日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯で5戦目になった。コロナ禍で開催に踏み切った主催企業には、感謝しかない。主催者として億単位のお金を出し、万が一の際のリスクまで背負うのだから。一方、厳戒態勢の大会を重ねる中で「もっとこうしたら、大会が充実するのでは…」という部分もいくつか見えてきた。感謝を大前提に「できれば」の思いで、書いてみたい。

まずメーカーのクラフトマン、つまりクラブ担当の作業について。彼らはツアーバン(トーナメントカーとも言う)でコースにやってきて、選手の要望に応じ、シャフト交換をしたり、ライ角などを調整する。通常時は練習ラウンドに同行したり、ドライビングレンジ(打撃練習場)で実際に選手が打っている様子、球筋などを見て、自分なりの意見を持った上で選手のフィーリング、意見を聞き、作業に入る。いわゆる「フィッティング」だ。

ところが、今はそうはいかない。コロナ対策で「密」や極力接触を避けるとの理由で、練習ラウンドの同行はおろか、ドライビングレンジの立ち入りも禁止。「選手の球」が見られない。居場所は基本的にトーナメントカーの中だけだ。

あるクラフトマンが言う。「たとえば、選手が“球が右に行く。捕まらない”と言ってきたら、それをそのまま信じるしかない。自分はスイング、球筋を実際に見てないんですからね。結局、ロフトを立てて、ヘッドを左に向けたりして、調整したクラブを渡します。でも、本当にそれが正解なのかと不安が残ります」

プロと職人の会話が一方通行なら、プロのパフォーマンス向上につながらないおそれもある。まして、それが女子プロなら…。「男子プロなら(一方通行でも)ほぼいいんです。クラブのこと、わかってますから。でも、女子プロは男子よりクラブそのもの、構造、理屈をわかってない場合が多かったりしますから」。

せめてドライビングレンジで、すぐ近くでなく、10メートルほど後方からでも、ロープで囲ったエリアからでも選手の練習を見られたら、選手とクラフトマン両者にとって、よりよい成果が得られると思うのだが…。

ちなみに選手の用具はクラブだけじゃない。クラブに付随するシャフト、グリップのメーカーもあって、担当もいるのだが、彼らはコースに入ることすらできないのが現状だ。

あとプロキャディーの食事、衛生面について。彼らは通常、クラブハウスに出入りし、食事も選手ととったり、トイレも済ますことができる。しかし、今はクラブハウスへの立ち入りが制限されており、食事はコンビニで買って、持ち込み、仕事の合間を縫ってキャディーの待機場所で食べるパターンが多い。日本女子プロ選手権では冷蔵庫が準備されたようだが、それもない時は買ってきたものが傷む可能性があり、菓子パンだけだった、という話もある。10キロ以上のバッグを担ぐ力仕事なのに、酷な話だ。

大会は開催コースによって、クラブハウスの規模や設備も違う。そのため一律同じに、というのは無理な話かもしれない。しかし、せめて、どうにかなるものなら…。できる範囲で、少しずつでもトーナメントに関わる人々の待遇改善に期待したい。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)