国内女子ツアーで今、最も目を引くプレーをするのはプロ2年目でツアー未勝利の西郷真央(20=大東建託)だと思う。延田グループ・マスターズGCレディース(24日最終日)で6度目の2位に終わった西郷だ。

同大会は高速に仕上げたグリーンが印象的だった。第1日後、ホステスプロのイ・ボミが「このコースでやってきた中で1番です」と苦笑いしたように、とにかく速かった。予選落ちした渋野日向子ら多くの選手がタッチに苦労した。

グリーンの肝は速さ(フィート)と硬さ(コンパクション)にある。国内女子ではスティンプメーター(グリーンで球が何インチ転がるかを計る器具)の数値は11インチを切ることが結構あるが、第1ラウンド(R)が11 2/3フィート、第2Rが12フィート、第3Rが11 2/3フィート、最終Rは12 1/4フィートもあった。ちなみにコンパクションは4日間、22~23で平均的と言えた。

大会競技委員長の井上奈都子プロは「コンパクションをもう少し上げたかったけど、今年の気候の関係で芝の状態を考えると難しく、その分をと思い、速くしてもらいました。でも、速すぎるということはなかったと思いますよ」。国内女子は原則「12フィートまで」らしく、上限いっぱいを狙った結果、対応できた選手はスコアを伸ばし、苦しむ選手は苦しんだ。同プロは「初日のささきしょうこプロの8アンダーは想定外だけど、それ以外は想定内です」と言った。

プロが戦うにふさわしいセッティングにあって、最終日のホール別難易度が2番目に難しかった6番パー4(393ヤード)で、西郷はバーディーを奪った。いやバーディーという結果より姿勢にシビれた。フェアウエーから残り132ヤードの第2打。ピンはグリーン左端から4ヤード、手前から11ヤードで手前バンカーのすぐ向こう側。ピン根元は見えない。セーフティーを頭にグリーン右側を狙う選手が多かったが、西郷はピンをデッドに攻め、9番アイアンで3メートルにつけた。

「首位と2打差から出ていって、2番にいた時、後ろの最終組がいる1番グリーンから、すごい歓声が聞こえたんです。“みんなバーディーだ”と思って、果敢に攻めようと心がけました」。他のホールでもピン筋狙いを連発した。

西郷の2位は以下の通り。

サントリーレディース=最終日68で1打差。

アースモンダミンカップ=最終日66で2打差。

資生堂レディース=36ホールの短縮競技。最終日69で1打差。

日本女子プロ選手権=優勝した稲見が64を出した最終日69で4打差。

日本女子オープン=優勝した勝みなみが5つ伸ばした最終日パープレーの71で6打差。

マスターズGCレディース=優勝した古江彩佳は69だった最終日68で1打差。

日本女子オープンだけ最終日に伸ばせなかったが、他は伸ばして、優勝に届かなかった。2つの日本タイトルは、相手の状態がよすぎたとも言える。

マスターズGCレディース最終日のプレー後、西郷はこう言った。「優勝争いをたくさん経験して、少しずつ成長してるのかなって部分が、今日の後半(バックナイン32)に見えた。悔しさはありますけど、後半しっかり伸ばせたので、次のチャンスは来た時にまた頑張ろうと思います」。

勢いで手にしても、何度も悔しい思いをして手にしても初優勝は初優勝かもしれない。しかし、後者のケースで“その後”にとんでもないキャリアを築いたプロがいる。

通算50勝の不動裕理はプロ3年目の99年伊藤園レディースで初優勝を飾るまで、2位を6度経験している。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)