国内女子ツアーは、前週の大王製紙エリエール・レディースで、来季のシード選手が確定した。初シードは13人。ツアー通算14勝で22日に34歳の誕生日を迎えたばかりの有村智恵が、賞金ランキング50位で通算9度目のシードをギリギリ確保というほど、若い選手の台頭は著しい。有村は8月末に「ショットとパットのどちらかが、ちょっと調子がいいというだけじゃ、今のレベルだと予選通過も怪しい」と、ツアー全体のレベルが上がっていると切実に訴えていた。それでも「やっぱり優勝したいという思いで、ずっとやっている」と、復活優勝を果たしたい思いが原動力とも語っていた。

今季、その優勝にあと1歩まで迫りながら、シードを失った選手もいる。昨年10月のスタンレー・レディース2位の浅井咲希、今年3月の明治安田生命レディース2位の永井花奈。2人はプレーオフまで進みながら、ともに稲見萌寧に敗れた。どちらも通算1勝で20代前半にもかかわらず、さらに若い稲見に敗れたことは、若手が次々と台頭してくる現在の国内女子ツアーを象徴している。

3シーズン守ったシードを手放した永井が、今年の途中に吐露していたことがあった。「プロになってすぐのころは、勢いだけで全てうまくいっていた。頑張ったら頑張った分だけ、うまくいくと思っていた。でも去年から、そうじゃなくなった。1年1年、過ぎるのが早い。つい最近まで、自分が一番年下ぐらいの感覚だったのに、どんどん年下の選手が出てきて。なんか、全然もう…」。成績が出ない焦り、悔しさ、さまざまな感情がこみ上げてきた様子で、最後は言葉にならなかった。

19年に20歳にして日本人2人目のメジャー制覇を果たした渋野日向子でさえ、686日ぶり復活優勝を果たしたスタンレー・レディースでは涙を流した。優勝会見で「もう勝てないのでは、と思ったことは?」とたずねられると「あります、あります。メチャクチャあります」と即答した。続けて「女子プロゴルフは世代交代がメチャクチャ早い。2年前にレギュラーツアーに出始めたのに、もうって思ってしまうぐらい。自分が『置いて行かれている感』がありました。思いたくないけど、思ってしまう部分がありました」と、苦しい胸の内を明かしていた。

シードをめぐる悲喜こもごもに触れ、ありきたりな感想だが、厳しい世界だとあらためて思わされた。プロアスリートとして親が子どもに夢を託す際、男の子ならゴルフ以外にも野球やサッカーなど、1年間に数千万円以上の収入を得られる選択肢は比較的多い。一方、女の子に同様の夢を託すなら、ゴルフか、本当に一握りのテニスなど以外、それほど選択肢がないように思う。女子ゴルフ界の競争が激しくなるのは必然といえる。そんな中で、毎年のように結果を残し続ける選手もいる。身体能力や技術面以上に、常人には想像もつかない重圧に耐える精神力こそ、特に女子の、プロゴルファーの特殊能力なのかもしれない。【高田文太】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)