国内開幕戦・東建ホームメイト杯第2日の4月1日に桂川有人(23=国際スポーツ振興協会)を取材してから、あるインストルメンタルがずっと頭の中で鳴り響いている。「チャ~ン、チャ、チャ、チャ、チャ、チャ、チャ、チャ、チャチャ~ン」。歌詞がなく、文字では音程、リズムもわからないので意味不明でしょうが、新日本プロレス内藤哲也の入場曲「STARDUST」である。

優勝し新日本プロレス内藤哲也の決めポーズする桂川(撮影・鈴木正人)
優勝し新日本プロレス内藤哲也の決めポーズする桂川(撮影・鈴木正人)

桂川が「新日本プロレス好き」とわかった。昨季は下部のABEMAツアーでバーディーを取った時に両手を広げる「レインメーカー」オカダ・カズチカのポーズを披露していたらしい。プロレスを40年以上見続けるおっさんとして、記者の立場を忘れて原稿度外視? で話を聞いた。

始まりは中学2年の時、初観戦した団体はノアで、現在は新日マットに上がっているKENTAが好きだった。今は内藤哲也。メキシコから凱旋(がいせん)帰国してユニット「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」(制御不能なやつら)を結成、圧倒的人気を誇るレスラーだ。

「最初にプロレス見たのはたまたまでした。でも、みんな体張ってるのがすごいと思って。勇気もらえるっていうか。スポーツの力を感じました。それはきっとゴルフにも共通すると思います」。翌4月2日の第3ラウンド、4番でバーディーを奪うとガバッと両手を広げ、レインメーカーのポーズを見せた。無観客大会なのに、記者数人が見ているのがわかり、サービスしてくれた。

オカダ・カズチカのレインメーカーポーズ
オカダ・カズチカのレインメーカーポーズ

「優勝したら、内藤選手のポーズやね」と振ると「オリジナルのポーズがあればいいんですけど、やっぱり内藤さんのやつですね。優勝したら、やります」と公約してはいたが…。

2週後の関西オープンの練習ラウンド中に「トランキーロ!」と声を掛けた。「はい。トランキーロで」-。内藤がコメントの締めに使うスペイン語の決め文句が「トランキーロ、あっせんなよ」。なので、てっきりのんびり行くと思っていたのだが…。

まさか国内3戦目ISPSハンダ欧州・日本トーナメントでツアー初優勝を飾るとは、しかも左目を左手で見開かせる“俺は見えてるぜ”の内藤ポーズを本当に披露するとは…。

インゴベルナブレスポーズを披露する内藤哲也(2020年撮影)
インゴベルナブレスポーズを披露する内藤哲也(2020年撮影)

一連のパフォーマンスを見て、キャリアの浅さ、23歳という年齢からチャラけた印象を受ける人もいるかもしれないが、話す内容や漂わす空気を見れば、全然そうじゃないことがきっとわかってもらえる。

国内開幕3戦を終えた部門別データで、パーオン率が81・481%の1位。24位だった関西オープンも同率は76・389%の3位。パットが入ってさえいれば、という内容だ。167センチ、70キロと小柄だから、飛ぶ方ではない。実際ドライビング・ディスタンス287・75ヤードを29位。ただし、持ち球が安定性の高いフェードということもあり、フェアウエーキープ率18位(67・857%)と総合したトータル・ドライビングは5位と高い。当たり前だが、技術に裏打ちされたショットメーカーである。

コロナ禍で賞金ランク加算対象から外れた1月のSMBCシンガポールオープンで2位となり、全英オープン出場権を獲得。東建はプレーオフ負けの2位。関西オープンはパットが入らず24位。そして優勝。インゴベルナブレスなゴルフがしばらく続きそうだ。脳内ヘビーローテはやみそうにない。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)

カブトと羽織を着て新日本プロレス内藤の決めポーズする桂川有人(2022年4月24日撮影)
カブトと羽織を着て新日本プロレス内藤の決めポーズする桂川有人(2022年4月24日撮影)