渋野日向子の伸びしろをプレー以外からも感じた。本格参戦した米ツアーから一時帰国し、ブリヂストン・レディースに出場した渋野を取材した。渋野は今季国内初戦。めったにない取材機会だけに、練習ラウンドからマークし続けた。

自然体で仲間と楽しく練習していた。練習ラウンドは午前は工藤優海、上野菜々子、午後は工藤、青木瀬令奈と回った。午前も午後も3人で大盛り上がり。何度も大爆笑していた。バンカーショットでは「やべーっ」と叫んだり、仲間のいいショットには「おおーっ」と感嘆の声を上げた。工藤は渋野について「何か食べながら回っていたり、空気感は変わらない。普段通り。いい意味で裏表がない」と話した。納得だった。

会見でも飾らなかった。帰国後、何をしていたか聞かれると「実家のわんちゃんに遊ばれました。久々に会って」と答えた。すかさず「ここ、笑うところだから!」と突っ込んだ。

今季絶好調の西郷真央に話が及ぶと「1回勝ったら、なんぼでも勝てる子だなというレベルの高い選手。西郷選手はパーオン率、フェアウエーキープ率が高い。私もそういうゴルフがしたいと思う選手です」と評価した。年下の西郷に対し、素直に尊敬する気持ちが伝わってきた。

ラウンド中は礼儀正しい姿勢が印象的だった。自分のプレーを終えると、次のホールに移動する選手も少なくない。トイレ以外、一緒に回る選手がプレーを終えるのを必ずグリーン横で待った。「次に行ってる気がするけど。心掛けていることはないです。動くのは良くないかなとは思いますけど」と振り返るなど、自然な行動だった。ボギーでも、同組の選手がいいパッティングをすれば、「ナイス」と必ず声を掛けた。

個人的に最も印象的だったのは居残り練習だった。第1ラウンド後の会見を終えると、練習場に直行。他の選手がどんどん引き揚げる中、誰もいなくなるまで練習を続けた。第2ラウンドで予選を通過できなかったが、ドライビングレンジに直行した。予選落ちの選手がそのまま会場で練習することはめったにない。

練習場に関係者があいさつに来ると練習を中断し、笑顔で対応。ピリピリムードはなかった。クローズ時間の午後6時過ぎまで練習し続けた。球拾いが行われる中、「もう1球!」とおかわり。報道陣にも笑顔で「お疲れさまでした」と去った。予選落ちのショックを決して見せず、前向きな姿だけを感じさせた。

素直さと謙虚さ。可能な限り、努力し続ける姿勢。言葉とともに、その行動の数々を目の当たりにした。さらなる成長と活躍を確信した。【近藤由美子】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)

ラウンド後、ギャラリーに囲まれてショットの練習をする渋野日向子(撮影・滝沢徹郎)
ラウンド後、ギャラリーに囲まれてショットの練習をする渋野日向子(撮影・滝沢徹郎)