今季国内ツアー初出場の石川遼(24=CASIO)が通算16アンダー272で昨年の長嶋茂雄招待セガサミー杯以来のツアー通算12勝目を挙げた。首位タイから出て、5バーディー、2ボギーの69で抜け出した。決勝ラウンドではパー3を除くすべてのホールでドライバーを握り攻めきった。自分の新スタイルを貫き来月の来季米ツアー開幕に弾みのつく勝利となった。

 2位に2打差で迎えた18番、ボギーで勝てる場面でも石川はドライバーを振り切った。球は右の林へ。残り175ヤードの第2打は5番アイアンでスライスをかけてグリーン手前エッジに運び、パーにまとめる。「うまいゴルフではなかった」と言いつつ、表情は誇らしげ。「自分を信じてゴルフができた」。攻めきった充実感がにじんだ。

 前週までは「失敗への恐怖」からゴルフが縮こまっていた。前週のネスレ日本マッチプレー1回戦で対戦した堀川未来夢の、のびのびしたプレーを見て気づかされた。「先週までのプレーでは10オーバーもないけど、7アンダーもない」。そこで今大会は「ドライバーで攻めて、通算20オーバーで予選落ちしてもいい」という覚悟で臨んだ。

 右ドッグレッグの13番は3番ウッドなどで刻む選手が多い中、ドライバーで右の林越え。グリーンまで50ヤードのラフまで飛ばし、ピン右3メートルにつけてバーディーとし、勝利を引き寄せた。コースにプレーを限定されるのではなく「自由なゴルフ」ができたという。ファウラー、マキロイ、スピースら世界トップ選手は「こういう感じでプレーしているのかな、と感じた」。

 新スタイルを貫き、いきなり優勝。15日は両親の結婚25周年の記念日で、父勝美さん(58)は「最高のタイミング。何かもらうよりも、こういう姿を見られれば」と目を細めた。石川は「これをアメリカでやりたい」「ゴルフが本当に楽しくなってきた」。米ツアーで今季は苦しんだが、来季に向けては明るい光が差し込んだ。【岡田美奈】