「ゴルフ人生で一番いいパットだった」昨年正規18番のバーディーパットの感覚を求めて、8月に3時間も練習場でボールを転がし続けたこともあった。執念が実ったのか、PO2、3ホール目は相手のパットがわずかに外れて望みをつないだ。粘り勝ちだった。

 丸山茂樹と自身が持っていた記録を上回る米4勝。「そこに挑戦したのも僕だけ。丸山さんの3勝を早く超えたいと思っていた」と胸を張る。正規18番では進藤キャディーが「飛びすぎて逆に(落としどころが)狭くなる」と苦笑する超ビッグドライブ。PO1ホール目の第1打は海外メディアカメラマンが誤ってインパクト前からシャッターを連写も、最後は片手1本でフェアウエーに運んだ。

 アドレナリン全開の理由は、優勝を決めた17番グリーンの脇で唐突に明かされた。「ボブさん、誕生日おめでとう。ここ(優勝グリーン)で言うために、ずっと(おめでとうを)言ってなかったんだ」。5日は米国でマネジャーとしてサポートするロバート・ターナー氏の64歳の誕生日。当人同士しか聞こえないほど小さな声で感謝を伝えていた。

 「僕が日本で一番のプレーヤーかと言われたら、まだそうは思わないですけど、しっかりとそうなっていけるように頑張りたい」。本人にとっては通過点だが、ツアー史上最多となる65万5434人を集めた大会で間違いなく証明した。これまでで最も強い日本人ゴルファーは、松山英樹であると。【亀山泰宏】

 ◆松山英樹(まつやま・ひでき)1992年(平4)2月25日、愛媛・松山市生まれ。明徳義塾高から東北福祉大へ進み、11年マスターズで日本人初のベストアマ。大学4年の13年4月にプロ転向し、日本ツアー賞金王。日本ツアー8勝。13年10月から米ツアーに本格参戦し、14年6月初優勝。昨季(15~16年)の米ツアー賞金ランキング9位。181センチ、90キロ。

 ◆フェニックス・オープン 32年に第1回が開催された歴史ある大会。80年代まではフェニックスで行われていた。現在は隣町のスコッツデールで開催されている。最多優勝はアーノルド・パーマー、ジーン・リトラー、マーク・カルカベッキア、フィル・ミケルソン(いずれも米国)の3回。最少スコアはカルカベッキアとミケルソンの28アンダー。