6打差を追い、1番のバーディーから猛チャージが始まった。4番はグリーンの外から12メートルをパターで流し込み、5番は第2打をピン奥50センチにピタリ。後半も勢いは止まらず、ボギー直後の16番は3メートルのパットを沈め、今週で初めて小さく拳を握った。18番も完璧なアプローチからバーディーで締め、この時点で首位と1打差。“クラブハウスリーダー”としてテレビでチェックしながら待った。最後は「ブルックス(ケプカ)はいい友達ですし、いいプレーをしていた。次の試合では負けないようにしたい」と勝者をたたえた。

 世界ランク2位まで躍進した松山だが、その座にあぐらをかくことは、決してない。宮里優作の父優さんや日本屈指の名手谷原、スペインのカブレラベロ…。今週はパットのヒントを探そうと必死にもがいた。5月のプレーヤーズ選手権ではツアー通算1勝と自分より実績で劣るマガート(米国)にショットの助言を求めたこともあった。

 特定のコーチを付けずに戦い、技術探求の貪欲さは人一倍。その分、試行錯誤に費やす時間は膨れ上がる。今年は2月に首、直近メモリアル・トーナメントでは左肘と万全で戦えない試合が増えた。全米オープン前週、拠点のフロリダは雨続き。屋外で満足な練習はできなかったが、飯田光輝トレーナーは「神様が休めと言ってくれていたのかもしれません」と振り返る。コンディション面の不安は少ない中で迎えられた。

 メジャーでも世界ランクでも、仰ぎ見るイスはあと1つだけ。「次はもっと最終組に近いところで回って、争えるようにしたい」。松山の、日本の悲願であるメジャー制覇は、本当に手の届くところにある。【亀山泰宏】